ふるはしかずおの絵本ブログ3

『パパの大飛行』- 国境は有名無実となった

フランスの飛行家・ルイ・シャルル=ジョゼフ・ブレリオ (1872-1936) が、飛行機による英仏海峡横断に成功するまでを描いた絵本です。

     

    ・・・

1901年 フランスの町 カンブレ。

  

 クラッケタ……クラッケタ……クラッケタ……

   

空から、変な音が聞こえてきます。 

それは、

大きな白い飛行船でした。

    

   

ブレリオは、空を飛ぶことに 魅了されました。

  

   

 「わたしも 空飛ぶ機械を つくるぞ

  大きな 白い鳥のようなのをな」

     

     

ブレリオⅠ号」を作りました。

モーターが付いていましたが、ニワトリぐらいの大きさでした。

「ブレリオⅡ号」は、グライダーでした。

飛びましたが、たちまち 川に落ちました。

「ブレリオⅢ号」は、モーターと プロペラ付きでした。

でも、水の上を 離れようとしませんでした。

 

 

「ブレリオⅣ号」

「ブレリオⅤ号」

「ブレリオⅥ号」も 失敗。

    

でも、

ほんとうに 空を飛ぶ、

ブレリオⅦ号」を つくりました!

飛行機づくりを始めてから、6年の歳月が たっていました。

  

 

ちょうど、その時

「ロンドン・デイリー・メイル紙」に、

英仏海峡を 飛行機で 横断した人に、

1000ポンドの賞金があたえられる、という広告が出ました。

  

   

1909年7月25日 朝、4時35分

ブレリオ・パパと「ブレリオⅪ号」は、

イギリスに向け、飛びたちました。

       

フランスの岸が、遠くなります。

霧が でてきます。

まわりは なにも 見えません。

パパは  じっと 座っていました。

飛行機の いきたいほうへ いかせてやるしかありませんでした。

   

とつぜん・・・

ドーヴァーの 白い崖が 見えたのでした。

すばらしい 一瞬です!

   

パパは、37分で 海峡をこえたのです。

    

       ・・・

表紙見開きの次のページに、「パパの大飛行 ルイ・ブレリオついに英仏海峡横断に成功」というデイリー・メイルの紙面があります。「ブレリオの談話」を引用します。

    

この地球はもはや、地理的なへだたりを口にするには小さすぎ、国境も有名無実となったのですから、我々は人類が戦争放棄の責務を理解し、ひとつの囲いにいる仔羊たちのように生きる日の来ることを、期待しようではありませんか。これこそ、そして、これのみが、人類の翼がもたらす真実の決定的な勝利でありましょう。

     

    

その後の歴史を見るとき、ブレリオの希望は実現しませんでした。むしろ戦争の道をすすみました。しかし、かれの思想は、現在、宇宙飛行士が、宇宙から地球を見たとき、「地球はひとつ」と言うことに通じています。「ひとつの囲い(ひとつの地球)にいる仔羊たち(人間)のように生きる日の来ること」。それは、現代の大きな課題です。

    

       ・・・

※『パパの大飛行』アリスとマーチィン・プロヴェンセン作、脇明子訳、福音館書店 1986年  (2024/1/11)

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