ふるはしかずおの絵本ブログ3

『きこりと あひる』- バーテクの勇気や優しいこころ
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昔、
ポーランドの山の中に、バーテクという貧しい若者が暮らしていました。家には、一羽のあひるがいるだけでした。

      ・・・

ある日、
バーテクが、あひるの餌をさがしに池に出かけると、誰かに呼びとめられました。

見ると、

カエルが 野ばらに、はまりこみ 動けなくなっています

「わしはカエルの王じゃ。助けてくれれば、たっぷりと礼はいたしますぞ」
「別にお礼なんぞはけっこうですよ」
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カエルは、バーテクに魔法のメロディをさずけます。このメロディを口笛で吹きさえすれば、大風が吹きかみなりが鳴り稲光りが走りどしゃぶりの雨がふると言います。
     ・・・
バーテクは、軍隊の行列と出あいました。
屋敷に案内せいと隊長は命じます。
そして、
あひるを夕飯にするといいだします。

バーテクは、魔法の力をおもいだし、口笛をひと吹きすると、兵士たちは木の葉のように空高くまいあがりました。
屋根の上に飛ばされた隊長は、あひるは食べないと約束します。バーテクがもう一度口笛をふくと、嵐はぴたりとおさまりました。
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しかし、隊長はバーテクとの約束を破ります。
「わしの ばんめしに、あひる やけい」
バーテクは腹が立ち、もういちどあのメロディをひとふき。
空はまっくら。
大雨がふりだします。
洪水で、兵士たちは あっぷあっぷ。

   
威張るだけの隊長は もうごめん。
兵士たちは隊長を追放して、バーテクをあたらしい隊長にしました。
そして、
かがやかしい あしたをめざして 

バーテクと あひるは、いさんで でかけていった
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昔話の骨格をもった面白いおはなしだと思います。

プロップの昔話の機能論で言えば、カエルの王様が〈贈与者〉です。カエルの王様を助けたことで呪力が与えられます。呪力は魔法のメロディでした。このメロディを口笛で吹きさえすれば「大風が吹きかみなりが鳴り稲光りが走りどしゃぶりの雨がふる」のです。
   
バーテクが魔法のメロディを吹くのは、何のためだったのでしょうか。その目的はあひるを助けるためでした。カエルの王様が授けた呪力はそのために発揮されます。あひるはバーテクの友であり、民衆を象徴するものと言えるでしょう。兵士たちは、バーテクの勇気や優しいこころを理解し、彼をあたらしい隊長にしたのです。
   
手にいれるのが難しい絵本です。静岡市中央図書館の書庫からこの絵本を出してもらいました。絶版のようです。
      ・・・
※『きこりと あひる』 クリスティナ・トゥルスカ作 遠藤育枝訳 佑学社 1979年  

 

【 追記 】

「絶版のようです」と書きました。このブログを書いた当時はそうでしたが、現在『気のいいバルテクとアヒルのはなし』(クリスティーナ・トゥルスカ作・絵、おびかゆうこ訳 )というタイトルで徳間書店から復刻されています。

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