ふるはしかずおの絵本ブログ3

『おおきな ものの すきな おうさま』- ナンセンスな寓話

おうさまの持ちものは、なんでも規格外れの大きさです。

       

        ・・・

おうさまは、

屋根より 高いベッドで 目覚めます。

歯ブラシは、ふたりで 抱え、

プールのような 洗面器で 顔をあらいます。 (゚д゚)!

帽子も 特大です。

 


時計の 大きな音は、

知らないひとは 腰を 抜かすほど。

おおきな 調理皿。

のこぎりより 大きい ナイフ

   

    

百年の かかっても 食べきれほどの チョコレート (゚д゚)!

おうさまは、端のほうを ぺろりと ひとなめ。

 

 「うん、これは うまい。おおきさも ぴったりだ」

  

   

おうさまは おおきな くぎぬきで 歯を抜きます。

   

くぎぬきは 

おおきな 鳥かごに 作り変えられました。

でも、小鳥たちは かごの すきまから 逃げていきます。

おうさまは がっかり。

 

ところが、

ワシに 追われた 小鳥たちは とりかごに 逃げこんできました。

ワシは かごのなかには 入れません。

おうさまは すっかり ごきげんです。

      

  

おうさまは

おおきな 植木鉢に 

チューリップの球根を うえました。

  

おうさまは 待って います。

おおきな花が 咲くに ちがいないと、

まいにち まいにち まって おられます。

 

   

春に なりました。

おおきな おおきな うえきばちに、

かわいい かわいい チューリップ

ひとつ  咲きました。

    

         ・・・

ナンセンスなはなしです。また寓話です。

大きなものが大好きな王様も、大きなチューリップを手に入れることはできませんでした。安野光雅さんの「あとがき」にあるように、「生命を人間がつくることはできない。花一つ、虫一つが、かけがいのないものであることを 思わねばならぬ」と言えます。

              

でも、王様は、自分にはできないことがあることを知りました。自分にできないことを知った王様は、ひとつ賢くなった人と言えるかもしれません。読者も同様にひとつ賢くなりました。  

     

         ・・・

※『おおきなものの すきな おうさま』 安野光雅作 / 絵、講談社 1976年  (2024/4/20)

SHARE