
ウェイン王子の成長物語でしょうか?
それとも、母の愛をテーマにしたはなしなのでしょうか?
昔、
子どもたちを 猟師に殺された、トラが、
にくしみから 国のあちこちの 村を 襲いました
それでも、トラの怒りは おさまりませんでした
王さまは、
国の占い師が トラ狩りが うまくいくかどうか たずねました
占い師は 答えました
「ウェン王子を トラに さしだすしかありません・・・
王子さまは 危ないめにあうことは、決してないでしょう」
ウェン王子は、森の奥へと 入っていきました
トラは
ウェンを くわえて、つれていき
やさしく 寝かせ・・・
よりそって、あたためて やりました
トラは、隠れ家で
ウェン王子と 暮らしました
トラは、自分の子どもの姿を ウェン王子のなかに 見ていました
時は 流れ
ウェンは たくましい少年に なりました
王さまは、ウェン王子を とりもどすために
森に 兵を 送りました
火が はなたれ、
トラは 追い詰められました
そのとき、
ウェンは、兵の前に たちはだかり、言いました
「矢を打つな! みんな、さがれ!」
そのとき、
「道をあけて!」と
お后さまが、むすこの前に かけよります
ウェンも おかあさんだと わかりました
ウェンは、トラに 言いました
ぼくには 二人の おかあさんがいる
森のおかあさんだったおまえと、城のおかあさんと・・・
きっとまた、おまえに 会いにもどってくるよ
トラは 森に 帰っていきました。
それから、ウェンは 毎年 トラに会いに行きました。
ある日
ウェンは
自分の子どもを トラにあずけ 言いました
「トラとして 学ばなければならないことを
教えてやっておくれ
りっぱな王子になれるように」
「ぼくには二人のおかあさんがいる」と、ウェン王子がいいます。そして、毎年、育ての親のトラに会いに行きます。そして、ウェン王子は、「りっぱな王子になれるように」と自分の子どもをトラにあずけました。おはなしは、ウェン王子の成長物語です。
しかし、読者は、トラがウェン王子に愛情をそそいだいたことを知っています。また、実の母であるお后が、トラの前にして、ウェンに駆け寄る場面も見ました。ウェンを慈しむ森の母と城の母。ふたりの母の愛が、もうひとつのテーマです。誰を主人公にして、どのような話として読むかは、読者によるように思います。
中国の水墨画の手法で描かれた力強い絵です。中国には、子文というおとこの子が、赤ちゃんのときトラに育てられたという伝説がある、と著者は書いています。
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※『ウェン王子とトラ』 チェン・ジャンホン作・絵、平岡敦訳、徳間書店 2007年 (2026/4/20)









