ふるはしかずおの絵本ブログ3

『おちゃのじかんにきたとら』- とらと一緒に食事をするなんて

「もし~ならば」というファンタジー文法(ジャンニ・ロダーリ)の典型的なおはなしです。それは、タイトルの通り「お茶の時間に、もしとらが現れたら~ 」です。

      ・・・

ソフィーとおかあさんは、お茶の時間にしようとします。

すると、突然、

玄関のベルが 鳴りました。

そこに いたのは、

おおきくて 毛むくじゃらの、しまもようの とら

「ごめんください。ぼく、とてもおなかがすいているんです。おちゃのじかんに、ごいっしょさせて いただけませんか?」。

もちろん いいですよ」とおかあさん。

       ・・・

おなかをすかせていたとらは、

サンドイッチ、

パン、

ビスケットをぜんぶ食べ、

牛乳、

ティーポットのお茶をぜんぶ飲みました。

夕ごはんも、

冷蔵庫のものも、

戸棚の包や缶詰も、

オレンジ、ビール、水もぜんぶ飲みました。

そして、

ありがとう。ぼくは、そろそろ おいとまします。

       ・・・

帰宅した おとうさんに、とらのことを話します。

とらが、食べものを全部食べてしまったことも。

お父さんの提案で、みんなでレストランに行くことにしました。

ソーセージ、

フライドポテト、

アイスクリームつきの夕食を食べ、

ソフィーの家族は、しあわせなひと時をすごします。

      ・・・

あさ、

おかあさんは、

食べ物をたくさん買いました。

とら用の大きな缶詰も買いました。

でも、とらは、二度とあらわれませんでした。

「1968年の初版以来、世界で300万部を売り上げ、もっとも人気のある絵本作品のひとつ」(絵本ナビ)です。

 

でも、どこにそのような魅力があるのでしょうか。

何でも食べ、何でも飲むとらが魅力的なのでしょうか。確かに憎めないとらです。可愛いソフィー、優しいおかあさんでしょうか? それとも、たくさんの食べ物が出てくるところかな? とらが現れる事態なのに、不思議と日常的な生活が描かれているところ? つまり、ユーモア? とらの行動を受け入れる家族の温かさ? いきいきとした人物たちの絵でしょうか? 

おそらくこれら全部なのでしょう。

      

作者の ジュディス・カー(1923年-2019年)は、1933年に演劇評論家であった父とナチスの迫害からドイツを離れ、1936年イギリスに渡った人でした。とらの行動を受け入れる家族のはなしとして読みたいと思いました。

 

とらを受け入れるには、やはり、勇気がいります。

      ・・・

※『おちゃのじかんにきたとら』ジュディス・カー作・絵、晴海耕平訳、童話館出版 1994年 (2020/7/25)

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