ふるはしかずおの絵本ブログ3

『みんなのベロニカ』- 仲間外れにされるって、こんなにも悲しい

仲間外れにされた、かばのベロニカが、農場のどうぶつたちと仲良くなる はなしです。

    

    

かばのベロニカが、

パンプキンさんの農場に やってきました。

小さな池、

きれいな原っぱ、

たくさんの動物たち。

ここは、かばの天国だと思いました。

 

 

次の日、

ベロニカが、大きな声で「おはよう」というと、

みんな、「う、う」と のどを鳴らすだけで、誰も相手にしません。

 

 

 めんどりの アイダ

 めうしの クローバー

 ねこの コットン

 がちょうの ペチューニア

 いぬの ノイジー

 馬の ストロー

 おんどりの キング

 おやぶた

 やぎ

 ろば

 

   

みんな ベロニカを 無視します。

だれも ベロニカと 口をききません。

 

ベロニカは 食欲をなくし

家から でなくなりました。

 

 「あれは、ぐあいがわるいのよ」

 「あれは たしかに 病気だね」

 「かた目も あけなかったよ、それに、なんにも たべていない」

 

みんな、悲し気に 顔をふせました。

 

 

よく朝

みんなは、ベロニカに 食べ物を 持っていきます。

干し草、とおもろこし、ひきわり麦、じゃがいも、パン・・・

 

 

日曜の朝

ベロニカは、

元気になり、外に でてきました。

 

 「ベロニカが でてきた!

 「おはよう ベロニカ」

 「げんきになって よかったね」

 

 「おはよう みなさん」とベロニカも言いました。

 

 「あたらしい ともだち コケコッコー!」

 

 

その日は、パンプキンさんの農場 はじまっていらいの、たのしい日曜日でした。

ベロニカは、はじめに 思ったより、

もっと すてきなところだ、と思うのでした。

 

会話の多い文章です。また、動物たち、ひとりひとりの個性がしっかり描かれています。

 

パンプキン農場の動物たちは、見慣れないかばが来たので、どう対処したらいいかわかりません。素直になれない動物たちです。けっして悪意からではありませんが、口をきかずに、無視したことで、ベロニカを ふかく傷つけてしまいました。パンプキンさんの農場のことは、学校や仕事場のいじめと重なります。身につまされるはなしです。

 

ベロニカの気持ちを体験する読者は、仲間外れにされることがどんなに悲しいことなのかが、わかることでしょう。

 

また、「あれ」と呼ばれていたベロニカは、「あのベロニカ」「ベロニカ」「すてきな かば」「あたらしい ともだち」へと呼称が変わっていきました。みんなの気持ちが変わっていったことが、呼称の変化でもわかります。

       ・・・

※『みんなのベロニカ』 ロジャー・デュボアザン作・絵、神宮輝夫訳 童話館出版 1997年  (2023/6/13)

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