ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ロンパーちゃんとふうせん』-ふうせんの魅力

『よるくま』で人気の酒井駒子さんの絵本です。

      ・・・

ロンパーちゃんは、街でふうせんをもらいました。

家の中で、ふうせんとあそぶロンパーちゃん。

あれ あらら

ふうせんは天井に。

手が届かないロンパーちゃん

「おかあさん おかあさん」

「やれやれ どうぞ」

   ・・・

あれ あらら

また、ふうせんは また天井に。

おかあさんは

スプーンにふうせんをくくりました。

ふうせんは 

ういているのに とんでいかない

とんでいるのに ういている

    ・・・

ふうせんは、人物のように見えてきます。

お庭に遊びにいく ロンパーちゃん。

綺麗な草のかんむりを風船につけてあげます。

自分も花のかんむり。

そして、いっしょにままごと遊びです。

ピュウ!

風が吹いて、ふうせんは 木にひかかってしまいました。

おかあさんもとれません。

「もう あきらめましょう ロンパーちゃん」

ロンパーちゃんは、悲しくなりました。夕ごはんも美味しくありません。

「だって わたし ふうせんと いっしょに たへる やくそく したのに」。

いっしょに寝る約束までしていたのに。

      ・・・

かあさんは

明日、はしごを借りて、風船をとってあげると約束します。

「ほんとうに ほんとうに?」

「ほんとうよ ロンパーちゃん」

やっと 泣きやんだ ロンパーちゃん。

そして、こう思いました。

ロンパーちゃんのふうせんは -  おつきさん みたいよ…

おさないロンパーちゃんとやさしいかあさん。風船を指差す姿、ままごと遊びや涙をこぼす姿などロンパーちゃんの仕草がひとつひとつが、ていねいに描かれています。そして、かわいらしい。

また、黄色の風船がとても印象的です。スプーンがくくりつけられた黄色の風船は、ロンパーちゃんの遊び相手です。感情や表情をもった人物のようです。読者も、ものとしての風船ではなく、人間のような人物に見えることでしょう。そして、最後は「ロンパーちゃんのふうせんは - おつきさん みたい」です。同じ黄色い風船が、場面の展開にしたがってイメージをだんだん変化させていきます。

     

確かにものとしての風船ですが、もの(宝物)でもあり、人物(ともだち)でもある、ふうせんの揺れうごく微妙なイメージの変化を描いています。

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※『ロンパーちゃんとふうせん』 酒井駒子作・絵、白泉社 2003年  (2019/11/3)

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