ふるはしかずおの絵本ブログ3

『てん』-子育て・教育について学ぶ

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ワシテというおんなのこが、自己を変革していきます。
      ・・・

ワシテは 絵が苦手。

なにも 描けません。

まっしろな紙を見て、先生は、

あら! ふぶきの なかの ほっきょくぐまね

   ( うーん。なかなか いえない言葉です )。

「 なにか しるしを つけてみて 」。

「 これで どう!」 と描いたのは 一つの 「 てん 」 。

先生は…

       ・・・

つぎの週、

ワシテの絵は、きんいろの額にいれられて 飾られています。

ワシテは、
びっくり。
でも、彼女は思います。

ふーん!  もっと いい てんだって わたし かけるわ!

     ( ワシテのその気を 引きだしました  )

     ・・・

水彩の  セットを  出して、

ワシテは、どんどん「 てん 」 を描いていきます。

きいろ、

みどり、

あか、

あおの 「 てん 」の絵。

おおきな 「 てん 」の絵。

てんを描かない 「 てん 」の絵。

ワシテの作品は、 学校の展覧会で 大評判。

      ・・・

ちいさな「 てん 」の絵から、  

すてきな「 てん 」の絵へ。

それは、  ワシテの 成長した姿を象徴しています。

ワシテは、あたらしいワシテになったのです。

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ワシテを変えたのは 先生の言葉と行動でした。

ひとの欠点を 見つけることは やさしいことです。

欠点は 目につくのです。しかし、相手のよいところを 見つけるには力が必要です。

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みまもること

認めること

ほめること

描こうとする意欲と意図を 尊重すること、

子どもの心のドラマに 敏感になること、

子育て、教育について 多くのことを教えてくれる 絵本です。

      ・・・

最後の場面に、もう一度、

「 おねがい・・・サインして 」という言葉があります。

これは、ワシテが 絵を描くのが苦手な男の子に言う言葉です。

ケアされることで

ケアしたくなるのです。

すてきな こころは つながります。

      ・・・

「人々は  子供時代とは  どういうものであるか ということを  ちっとも 知らない。 ・・・ もっとも 聡明といわれている人々でさえ、子供の学習能力を  考慮に入れないで、おとなにとって大切なことを子供に 一所懸命教えている。 かれらは  いつも 子供をおとなに 近づけることに ばかり 夢中になっていて、おとなになるまでの 子どもの状態が どんなものであるか 考えてみようとはしない。 
         ルソー、 長尾十三二他訳  『エミール』  明治図書

      ・・・・・

※ 『 てん 』 ピーター・レイノルズ、 谷川俊太郎訳、 あすなろ書房  2004年

【 追 記 】

八島太郎 『 からすたろう 』(偕成社)も、教育について深く考えさせられる絵本です。がくげい会の場面はとても感動的です。

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