ふるはしかずおの絵本ブログ3

『あまがさ』- 雨の日が待ちどおしいモモ

雨の日を 待ち望む、モモ。

モモを見守る、父と母の 温かなこころと視線が あります。

 

        ・・・

モモは、

ニューヨークに住む おんなのこ。

3歳の誕生日に、

赤い長ぐつと、あまがさを もらいました。

  

夏、

雨が ふりません。

 

 「どうして あめ。ふらないの?

 「おまちなさい、そのうち ふるわよ

 

晴れた日や

風が 吹く日に、

傘をさしたい、というモモに

「かさは あめのひまで とっときましょうよ」

と、おかあさんが 言います。

    

 

何日も たった 朝、

雨が ふりました。

コンクリートの みちは、

雨のしずくが はねまわっていました。

モモの あまがさは、音楽を かなでます。

    

 ぼん ぽろ

 ぼん ぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 ぼんぼろ ぽんぽろ

 

雨は いちにちじゅう やみません。

幼稚園の かえり道、

モモは 自分に 言いきかせます。

 

 おとなのひとみたいに、

 まっすぐ あるかなきゃ!

 

あまがさの うえでは、

雨が 音楽を かなでます。

 

モモは、

おおきく なりました。

モモは、このはなしを すこしも 覚えていません。

でも、これは

モモが うまれて はじめて

あまがさを さした 日のことでした。

       

赤い長靴と雨傘は、子どもにとって魅力的なものでしょう。はやく雨が降らないかな、というモモの気持ちがわかります。雨が降った時の、モモのうきうきした気持ちがわかります。また、子どもの成長を見守る両親の深い愛情を感じます。最後に、思春期になったモモが描かれていますが、凛とした女性になりました。美しい絵です。

 

表紙の絵は、傘がモモの顔を断ちきるように描かれています。大胆な構図に、作者の強烈な個性を感じます。「神奈川沖浪裏」で、富士山を断ちきる押送船を描いた北斎のように。

  

八島太郎(1908-1994 )は、戦前、プロレタリア美術運動にかかわって検挙され、,昭和14年にアメリカに亡命した画家・絵本作家です。絵本では、ほかに『からすたろう』(偕成社)があります。

       ・・・

※『あまがさ』 やしまたろう作 福音館書店 1963年 (2023/7/21)

SHARE