
現代の寓話です。
ある日、やってきた
みなれない どうぶつ
おおきな スーツケースを ひきずっています
「なにが はいっているのさ」
と あかいトリ
「カップが ひとつ」
「カップが ひとつ?」
と、ウサギ
「でもね、
このなかには テーブルとイスもあるから」
「そんなわけないじゃん」
と、キツネ
「ほんと ほんと ちっちゃな 木の家も。
ぼくんちは おかのうえの もりに たってて・・・
ぜえんぶ スーツケースの なかにあるんだ」
長旅をしてきた
ふしぎな どうぶつが
疲れて ねむってしまうと
トリ、ウサギ、キツネは
スーツケースを 開けて なかを 確かめようとしますが・・・
スーツケースは バッカ―ン
カップが 割れ、
家の写真1枚が でてきました
ふしぎなどうぶつは 夢を みていました
逃げまわり、かくれ、たくさんの山をこえ
ふかい海を 泳いでいる 夢
夢の なかでも
スーツケースを かかえていました
夢からさめた
どうぶつが 目にしたものは
スーツケースのなかに あった
コップ
(割れたコップを 直したコップです)
トリ、ウサギ、キツネが
割れた コップを 直しました
テーブルと イス
ちっちゃな 木の家も つくりました
「ありがとう! かんぺきだよ
でも・・・
カップを もっと ふやさなくちゃね」
現代の難民問題をテーマにした寓話です。
スーツケースに入っていたものは、カップと家の写真だけです。スーツケースは、見なれない、ふしぎなどうぶつ(=難民)が持っているすべてです。テーブルとイス、住んでいた家は、どうぶつの話に出てきたもの(思い出)です。
トリ、ウサギ、キツネは、スーツケースの中のコップを壊してしまいました(このことにも象徴性があります)が、コップをなおし、写真の家とテーブルとイスを作ります。割れたコップと写真のなかの家に、もういちど形を与えました。「カップを もっと ふやさなくちゃね」。4人のあたらしい人間関係がうまれそうです。人びとのこうしたつながりを見たい作者のこころが表現されています。
おはなしは、4人の人物の会話が中心です。人物のセリフは、色分けされています。トリは赤、ウサギは黄色、キツネはオレンジ。ふしぎないきものは緑色です。語り手のことばは黒色です。
・・・
※『スーツケース』 クリス・テイラー・バレステロス作、久保美代子訳、化学同人 2022年 (2026/4/29)









