ふるはしかずおの絵本ブログ3

『どこいったん』-関西弁の会話のおもしろさ

自分の帽子をさがす、くまのはなしです。ユーモアのある関西弁の文章です。

     ・・・

ぼくの ぼうし どこいったん?
お気に入りの 赤いぼうしが、見つかりません。

さがしに いこ

 

くまは、動物たちに 聞いてまわります。

  

 「ぼくのぼうし どこいったん?」

 「きみのぼうし しらんなぁ」と きつね。

 「このへんでは みてへんで」と カエル。

  

  

 「ぼくのぼうし どこいったん?」と うさぎに聞くと、

 

 「し、しらんよ。なんで ぼくに きくん?

  ・・・ぼうしなんか とってへんで」と うさぎ。

 

でも、

うさぎは 赤い帽子をかぶっています。

くまは 気づいていません。

 「ぼくのぼうし どこいったん?」

 「みたで あおうて まるいやつ」と へび。

 「ぼうしって なんや?」と もぐら。

 
くまの赤いぼうしは 見つかりません。

 

 みつかれへんかったら どないしょう。

 ぼく かなしい……。

  

 

「どないしたん」と シカがたずねると、

 

  あっ、

  さっき!

 

くまは、うさぎのことを 思い出しました。 

 

 おい、こら おまえ。

 ぼくのぼうし とったやろ。

  

  

くまは、自分の赤い帽子をとりかえしました。

ぼうしかぶった うさぎは どこいったん?

 

 し、しらんよ。

 なんで ぼくに きくん?

 うさぎなんて しらんで・・・

 

うさぎは 見えません。

 (こわっ)

ストーリーはシンプルですが、主人公のくまの言動がとても面白い絵本です。とぼけた表情の動物たちも魅力的です。また、関西弁の会話が笑いを誘います。しかし、幼稚園や保育園の子ども向けかといわれると、すこしブラックなこの笑いが分かるかなと思いました。また、「うさぎはどうなったの?」「くまに食べられたの?」と聞いてくる子どもがいることでしょう。うさぎのその後は、絵本に何も書かれていません。このように聞いてくる子どもには、帽子を盗んだのだから、叱られたと思うよと答えておきましょう。小学校中学年向けかもしれません。

       ・・・

※『どこいったん』 ジョン・クラッセン作、長谷川義史訳、クレヨンハウス 2011年  (2023/1/23)

SHARE