ふるはしかずおの絵本ブログ3

『てっぽうをもった キジムナー 』- 沖縄を知る絵本
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キジムナーとは、

沖縄諸島で伝承されてきた妖怪、精霊です。

おはなしは、戦前、戦中、戦後の沖縄を生きた、さちこという女の子の物語です。
      ・・・
さちこは、

カリエスという病気で歩けません。
おとうさんは兵隊に、おかあさんとにいさんは疎開します。
おばあさんは、

「どうせ しぬなら、からだのふじゅうな さちこと、ここにのこる」と言っています。
      ・・・
戦争が激しくなり、多くの人が亡くなり、
おばあさんも 爆弾で死にました。

さっちゃんだけが 残されました
穴に潜む さっちゃん。
外にはアメリカ兵がいるので、怖くて出られません。

辺りが静かになると、食べ物をさがしに出かけます。
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おおきなガジュマルの木があります。
「おおきな木には キジムナーがいて、しまをまもっているさあ」
おばあさんの言葉を思い出したさっちゃん。
あっ、キジムナーだ
しいっ ……」
       ・・・・
夏が終わり、
冬になり、

春がやって来ます。

 (戦争が終わったあとのことです。)
キジムナーは、さっちゃんのことを心配して、木からおり、食べ物をさがしにでかけます。
 (キジムナーは元日本兵です)
パンパンパン
ダッダツダッダッ
さっちゃんは、夢中でギジムナーのところへ走っていきます。
「なぜ、キジムナーをうったの。なぜ、ころしたの。なぜ……」
ああ
さっちゃんは 助けられました。
おかあさんに 会うことができました。
でも、おとうさんとにいさんは 死にました。

島の半分以上のひとたちが 死にました。

それから、さっちゃんは不自由な体で畑をたがやします。しかし、その畑もアメリカ軍の基地になりました。
      ・・・
沖縄が日本に復帰しても、基地はそのまま。
おばあさんになった さっちゃん。
おじいさんとふたりで、戦争のことを伝える平和博物館をつくりました。ときどき、鉄砲をもったキジムナーのことを思い出します。

絵本の中に「ハナおばさんは、あかちゃんをせおったまま、竹やりをにぎって、アメリカのせんしゃへ つっこんでいきました」(上の絵)という文がありました。事実だと思います。フィクションであったとしても「あかちゃんをせおったまま」「竹やり」を握り「戦車」に突っ込む「ハナおばさん」の姿に心が痛みます。この戦争で無残な死を遂げた多くの「ハナおばさん」がいたことと思います。

      

沖縄県平和祈念資料館によりますと、沖縄戦で 200,656人が亡くなりました。日本人は188,136人(沖縄県出身者 122,228人)(他都道府県出身兵 65,908人)アメリカ人は12520人です。絵本を読み終え、戦前、戦中、戦後、そして現在の沖縄の人たちの苦難を想像し考えます。

       ・・・
※『 てっぽうをもった キジムナー 』 田島征彦 作・絵 童心社 1996

 

【 追 記 】

第二次世界大戦において、全世界で5000万~8000万の人が亡くなったと知りました。この数字に驚きましたが、数字の幅にもびっくりしました。正確な数が分からないということなのです。

日本の犠牲者数は約300万人です。  (2019/10/11)

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