ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ちいさなメリーゴーランド』- 「ああ、ぼくも のりたいなぁ」

馬にひかれた メリーゴーランドが、街に やってきました。

メリーゴーランドは、子どもたちにとって、どんなに魅力的なものだったことでしょうか。

 

      ・・・

ニューヨークの サリバン・ストリート

アンソニーが、

窓から 通りを 眺めていると、

にぎやかな音楽が きこえてきました。

  

 メリーゴーランドだ!

 

みんな、通りに 飛び出ました。

コレッリさんの メリーゴーランドには

しろいうま

くろいうま

ライオン

しろいぞう

赤いベンチが ありました。

 

メリーゴーランドのどうぶつたちは、

あがったり、さがったりしながら、

おいかけっこを しています。

 

 「1かい 5セントだよ

 

子どもたちは、お小遣いをわたして、つぎつぎにのりました。

コレッリさんが 扉をしめ、ハンドルをまわすと、

音楽がなり、

メリーゴーランドは、ぐるぐる まわりました。

 

 「ああ、ぼくも のりたいなあ!

 

アンソニーは、お小遣いを もっていません。

コリッリさんは、そんなアンソニーを見ていました。

 

 「すまんが わしの かわりに 

  ハンドルを まわしてくれないかい?」

 「え、ぼくが? いいの?」

 「もちろん」

  

 

アンソニーは、ハンドルを まわしました。

しばらくして、コリッリさンが、言いました。

 

 「こんどは きみが のるばんだよ

  

アンソニーは、まよわず、ライオンにのりました。

  

 「ありがとうございます。

  こんなに たのしかったの、

  ぼく はじめてです!」

  

コレッリさんは、

アンソニーと 握手をして、

車の座席にのり、馬の背を ピシッと はたきました。

 

        ・・・

読者は、アンソニーに同化して、さまざまな彼の感情を体験することでしょう。

ひとりぼっちの気持ち、メリーゴーランドに心躍る気持ち、「ああ、ぼくも のりたいなぁ」という気持ち、お手伝いのお礼にメリーゴーランドに乗せてもらった時の気持ち、コレッリさんに感謝するアンソニーの満足した気持ちを体験することでしょう。

読者も、メリーゴーランドに対するアンソニーのこころ踊るような経験を、どこかで体験しているのではないかと思います。あるいは、これからきっと体験することでしょう。

  

作者自身が、目にした、ニューヨークの街の光景です。

子どもたちが 生き生きと表現されたこの作品で、1946年、マーシャ・ブラウン(1918-2015)は、絵本作家としてデビューしました。

      ・・・

※『ちいさなメリーゴーランド』 マーシャ・ブラウン作、こみやゆう訳。瑞雲舎 2015年  (2023/7/24)

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