ふるはしかずおの絵本ブログ3

『かめさんのさんぽ』- はる、目覚めたかめさんの夜のさんぽ 

春がきました

バケツの土の中でねむっていた 

かめさんが でてきました。

けんちゃんは こざかなを あげます。

いぬのころは 「わん」と ほえました。

  

 

ころが、バケツを ひっくり返すと、

かめさんが バケツから でてきます。

  

かめさんは あしと あたまを そっとだし、

のそのそ 歩きだしました。

   

砂山の てっぺんで 

ころの 鼻が にゅっと でると、

まるくなって 転がりおちました。

 

   

かめさんは、池にはいって およぎました。

金魚たちが いいました。

   

 「おひさしぶり かめさん。いつ、でてきたの

 「きょう でてきたばかりだよ」

 

  

池からあがり、花壇の中に はいると・・・

かえるが でてきました。

  

 「おや、かめさん。いつ でてきたの」 

 「きょう でてきたばかりだよ」

 「いまごろ なにしているの」

 「よるの さんぽさ」

  

   

とつぜん、ねずみが とびかかってきました。

かめさんは、手も足もくびも ひっこめ、ぶるぶる ふるえました。

  

 「わん わん」

   

ころが ねずみを おいはらうと、

かめさんは、おそるおそる くびを だしました。

   

あさ、

けんちゃんは、かめさんを さがしました。

あっ いた。こんなところに いた

かめさんは、砂場に いました。

   

けんちゃんは、かめさんを バケツの中へ もどしてやりました。

かめさんは とても ねむたくなりました。

   

        ・・・

春の夜、目覚めたかめさんの一晩のさんぽです。

「かめさん。いつ でてきたの」「きょう でてきたばかりだよ」と、かめさんは、金魚やかえると会話をしています。でも、いぬの「ころ」との会話はありません。金魚とかえるのふたりは、カメさんにとって親しい仲間なのでしょう。

一方、けんちゃんは、かめさんを大切に育てています。いぬの「ころ」は、かめさんをねずみから守ってあげました。会話はありませんが、仲の良い友だちどうしです。

   

『ジオジオのかんむり』『かばくん』『ちいさいモモちゃん』の絵を描いた中谷千代子さんの絵本です。表紙の裏に、けんちゃんの庭の全体がわかる絵があります。かめさんのどこを歩いたのか、子どもと一緒にたどることができます。そういえば、『かばくん』のなかにも「かめくん」が登場していました。

     ・・・

※『かめさんのさんぽ』 中谷千代子作・絵 福音館書店 1978年  (2024/3/22)

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