ふるはしかずおの絵本ブログ3

『よわむしらいおん』- つよくで、よわむしのらいおん

ぼくが、朝、目を 覚ましたら、

らいおんが となりに ねていたの。

おかあさんが 言いました。

 

 「はやく おきなさい」

 「もっと ねていたいなあ」

    

らいおんが ほえました。

      

 「うおーっ!・・・おこすなあ!

   

おかあさんは びっくり。

 

 

 「あさごはんが あいすくりーむだと いいねえ」

   

 「うおーっ! あいすくりーむが たべたいぞう。

  たくさん たべたいぞおーっ!」と、らいおん。

  

たくさん、食べて おなかが れいぞうこみたいに つめたくなった。

 

 

 「あたたかいものが たべたいねえ」

    

 「うおーっ! あったかいものが たべたいぞう。

  たくさん たべたいぞう

 

   

らいおんは、

ラーメンだけでなく、

紅茶、コーヒー、スープ、番茶、昆布茶、おしるこまで たいらげました。

でも、おなかが いたくなりました。

 

 

 「あっ、いた、いたい」

   

 「いたーい」

 「いたーい」

  

お医者さんが おおきな おおきな 注射器を もって、やってきた。

   

 

 「ちゅうしゃは いやだ、いやだよう

    

らいおんは、にげちゃった。

よわむし らいおん、また きてね。

 

    

「ぼくが あさ めを さましたら、らいおんが となりに ねていたの」という文は、カフカの「変身」のようです。こうした状況設定は、幼児の文芸でなければできない荒業です。作者は、子どもはこうした設定をすんなりと受け入れるだろう、と考えているのでしょう。子どもは、ある意味、夢幻一如の世界にいます。

   

タイトルの「よわむし らいおん」は、「ちいさな巨人」「ゆっくり急げ」のようなオクシモロン(撞着語法)です。読者を一瞬立ち止まらせ、「笑い」をうみます。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(Back to the Future)のように、読者への仕掛けです。

「らいおん」というひらがな表記も、絵本のらいおんにぴったりです。

      

長新太さんのらいおんは、つよいのか弱虫なのか、よくわかりません。味な顔つきのらいおん。笑えるらいおん。ぼくの味方、ぼくの分身のような、らいおんです。

誰かに似ている らいおんです。

      

    ・・・

※『よわむし らいおん』 八木田宣子作、長新太絵、徳間書店  2002年

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