ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 あおい やまいぬ 』-「このあおい王さまは、やまいぬに すぎない!」

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インドの昔話です。
     ・・・
とおぼえ と 名のついた やまいぬが、
はげ山の洞穴に 住んでいました。
ある夜、
とおぼえ は、 
食べものをあさりに、町へ行きました。
     ・・・
しかし、
町の犬たちに怯え、染物屋へ逃げ込みます。
飛び込んだところは、 
の おおがめ。
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藍瓶から はいだして、
森へ逃げかえった とおぼえ。
からだが、あざやかな青色にかわっています。
森のけものたちは、その姿に恐れをなし逃げだします。
     ・・・
これを見て、
とおぼえは、けものたちに呼びかけました。
わたしは、神々から送られた 王なのだと
とおぼえは、けものたちを家来にしました。
332 ライオンを そうりだいじんに
 とらを  ねどこの かみに、
 ひょうを さらまもりの つかさに、
 ぞうを  ごもんの すけに、
 さるを  かさかざしの こしょうに

 そして、やまいぬの一族を追いはらいました。
     ・・・
しかし、ある日、
やまいぬの遠吠えが聞こえると、うれし涙があふれ、毛がさかだち、とおぼえは鼻面をあげて吠えました。
けものたちは、気がつきました。
このあおい王さまは、やまいぬに すぎない!
そして、とおぼえを追い払い、洞穴に追いやりました。
ゆあ1
洞穴で、とおぼえは考えます。
   
 なんだったのか ?   あのくらしは ? 
 あのさかりのときは ? あのつきあいは ?
 そんをしたのか ?   とくをしたのか ?
 いったい、わたしは なんだろう ?
 わたしに ちからが あったのか ? --
 このことは かたときも わすれずに 
 むねにてをおいて かんがえるが かんじん

     
とおぼえの本性があらわれ、まさしく、化けの皮が剥がれたというおはなしです。「ライオンの皮を被ったロバ」(An ass in a lion’s skin.)。でも、とおぼえは「いったい、わたしは なんだろう ?」と自問しています。「わたし」とは私です。とおぼえだけのことではなく、言うまでもありませんが、私たち自身の問いでもあります。「 汝自身を知れ 」。
マーシャ・ブラウンの版画は『 ちいさな ヒッポ 』と同様の多色刷り版画です。力強いタッチとけものたちの表情と動きがすばらしいと思います。ヒッポの場合は赤でしたが、この絵本は「とおぼえ」の青、藍の青が印象的です。
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※『あおいやまいぬ』 マーシャ・ブラウン作・絵、瀬田 貞二絵、 瑞雲舎、1999年  (2018/9/20)

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