ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 にんげんごっこ 』- 人間社会を批評する

「にんげんごっこ」をするどうぶつたち。

人間の社会は、どうぶつたちにどのように映ったのでしょうか?

     ・・・

どうぶつたちは、

にんげんの町からくるらしいバスに 大騒ぎ。

にんげんの町って、どんな とこだろうと想像しています。

野良猫の のらが言います。

「ぼくは、にんげんと くらした ことだって あるんだぜ」

のらは、

にんげんごっこを しようよ」と提案します。

そうすれば、人間のことがわかると言います。

みんなは大賛成。

     ・・・

どうぶつたちの「にんげんごっこ」がおもしろい。

町には横断歩道があって、みんな学校に行くと、のらが言います。

「しまうまくん・・・おうだんほどうに なって くれる?」

みんなは、

しまうまの上をわたり始めます。

「いててて。にんげんの まちって、とても いたい ところなんだね」( 下の絵 )

踏切になったのは、きりん。

きりんは首をあげさげします。

「ふうっ、にんげんの まちって、くびの つかれる ところなんだね」

     ・・・

学校では、地図の勉強。

地図になったのは、くろしろ模様の牛。

「ここが 日本で、こっちが アメリカ・・・」

のらに指でからだをつつかれて、

牛は、

「くくく、にんげんの まちって くすぐったい ところなんだね」

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つぎは、にんげんの家にあることの真似です。

包丁になったのは、くちばしの長い鳥。

鳥は、目をまわして、

「クエッ、クエッ、な、なんだか にんげんの まちって 目が まわる ところなんだね」

     ・・・

掃除機は ありくい、

ぞうは 水道、

ひつじは ソファー、

はりねずみは たわし、

かめは 体重計。

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にんげんのパパはトイレで新聞を読むと、のらは言い出します。

カバは トイレ、

ももんがは 新聞。

のらが 「うーん。」と力むと

かばは おえ--! 

「にんげんごっこ」は もう こりごり。

人間の町は、痛くって、くすぐったくて、まずくて、恥ずかしくって、重くて、疲れて、目が回って、とても気持ちの悪いところなんだね。

みんな、おおあわてで 森の奥に 駆けだして行きました。

      ・・・

笑話ですが、どうぶつたちの「にんげんごっこ」を通して、人間社会の真相を穿っています。現実の人間の町や社会は、どうぶつたちの言うとおり、「痛くって」「恥ずかしくって」「疲れて」「目が回って」「とても気持ちの悪い」世界かもしれません。

しまうまが横断歩道になったり、ありくいの掃除機、かめの体重計、カバのトイレが笑えます。 (*´∀`*) 
「人間社会を批評する」と副題をつけましたが、それは意味づけ(解釈)です。まずは、読者の子どもたちと一緒に「こんなことしている」「おかしいね、変だね」と笑ってください。

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※『にんげんごっこ』木村裕一作、長新太絵、講談社 1997年  

   

【 追記 】

あるもの(どうぶつ)の目を通して、別のものごと(にんげんのまち)を照らしだしています。そこから人間社会の批評がうまれ、ユーモアとアイロニーがうまれました。こうした虚構の方法も学びたいと思います。  (2019/7/28)

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