ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 おかあさん だいすき 』- 絵本の基本的な表現方法が いっぱい

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80年以上も昔の絵本(1932年)です。日本での出版も1954年です。この絵本には、2つのおはなしがはいっていますが、「おかあさんのたんじょう日」を紹介しました。
典型的な絵本表現がたくさん見られます。
     ・・・
おかあさんのたんじょう日に 何をあげたらいいのか
だにーは 悩んでいます。
それを 見つけに 出かけます。
      ・・・
めんどりに 会いました。
「なにか あげるものは ないかしら」と
だにーが たずねます。
「たまごを ひとつ あげましょう」とめんどり。
「でも、たまごなら、もう あるの」
だにーと めんどりは いっしょに さがしに 出かけます。
ぴょん ぴょん
      ・・・
がちょうに 会いました。
「なにか あげるものは ないかしら」
「まくらが できるように、わたしの はねを あげましょう」
「でも、まくらなら、もう あるの」
だにーと めんどりと だちょうは いっしょに さがしに 出かけます。
ぴょこ ぴょこ。
     ・・・
このあとは くりかえしです。
やぎは チーズが できるように やぎの乳。
「でも、ちーずなら、もう あるの」
とっとこ とっとこ。
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ひつじは 毛布が できるように ひつじの毛。
「でも、もうふなら、もう あるの」
ぴょんぴょこ ぴょんぴょこ。
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めうしは 牛乳。
「でも、ぎゅうにゅうなら、もう あるの」
「それじゃ・・・くまさんに きいてみたら」
でも、だれも いっしょに いきません。
だにーは ひとりで くまを さがしに 森へ 出かけました。
     ・・・
だにーは、おおきなくまに 会いました。
「なにか あげるものは ないかしら」
「なんにも あげるものが ないね。でも いいことを おしえて あげよう」
そっと ないしょで 教えます
「うん それが いいや」
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おかあさんのもとに 帰って だにーは 言います。
「なにを あげるか、あてて ごらんなさい」
おかあさんは いいます。
「たまごかしら?」「いいえ」
「まくらかしら?」「いいえ」
「じゃ、ちーず?」「いいえ」
「それじゃ、もうふ?」「いいえ」
「じゃ、ぎゅうにゅう?」「いいえ」
     ・・・
そこで―
だにーは、おかあさんの くびに ぎゅっと だきつきました
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おなじみの くりかえしの表現がありました。くりかえしはイメージと意味を強調する表現です。また、ページをめくる楽しみがうまれます。「ぴょん ぴょん」「ぴょこ ぴょこ」「とっと ことっとこ」のオノマトペ。オノマトペが、たのしい音と音楽を絵本に添えます。
くまは だにーに「いいこと」を教えました。でも、そのいいことを だにー(人物)は知っているのに、読者は知りません。読者は、だにーの考えを知りたくなります。おはなしに引き込まれる読者がいます。
最後の場面のふたりの会話は、掛け合いのようなおもしろさです。そして、おかあさんに抱きつく場面(bear hug)へと収束していきます。
おかあさんを思う子どもの気持ちはいまも昔も変わらない。
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※『 おかあさん だいすき 』 マージョリー・フラック文と絵、光吉 夏弥訳  岩波書店 1954年 
この絵本には、「おかあさんのたんじょう日」と「おかあさんのあんでくれたぼうし」の2つのおはなしがはいっています。 (2017/4/1)

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