ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ずいとんさん』- ずいとんさんときつねの知恵くらべ

知恵のある小僧のずいとんさん。本尊に化けたきつねの正体を見抜きます。

     

     ・・・

あるとき、

山寺の和尚さんが、

ずいとんに 留守番を 頼みました。

   

 「きょうは、わしのかわりに・・・おきょうを あげとくれ」

    

ずいとんが、

お経を あげていると、

庫裏から、「ずーいとん ずーいとん」と呼ぶ声がする。

でも、誰もいない。

   

 「はてな、おれは ねぼけたのかな

    

また、

「ずーいとん ずーいとん」と呼ぶ声がする。

庫裏の戸を あけると、誰もいない。

    

 「こいつは へんだぞ

     

    

小窓をあけ、外を 見ていると、

きつねが、

しっぽで 「ずーい」と、戸をこすり、

あたまで 「とん」と、 戸をたたいている。

    

きつねの しわざを 見破り、

ずいとんは 「えいやっ」と、戸を開ける。

きつねは、すてーんと ころがった。

    

     

きつねは、本堂に 逃げていく。

でも、

本堂に きつねの姿は どこにもない。

    

   

よく見ると、

ご本尊さまが ふたつもある

ずいとんは、こう言った。

    

   

 「ご本尊さまは、お経を あげると、お喜びになって

  したを おだしになる。・・・

  なむあみだぶつ なむあみだぶつ

    

   

かたほうの ご本尊さまが ぺろりと したを だした。

ずいとんは、

心張棒で きつねのあたまを こつーんと たたいた。

   

 「いたずらぎつね、まんまと おれに だまされたな」

    

きつねは、山の中に すたこら 逃げていった。

    

     

知恵をはたらかせた、ずいとんさんの勝ちです。きつねを懲らしめる痛快なはなしでした。登場人物もずいとんさんときつねのふたりだけ。また、「そして」「そして」と続く、明快なストーリーです。はじめての昔話にぴったりです。

   

ところで、本堂に逃げ込んだきつねの姿が見当たりません。「おかしいな どこに かくれたんだろう」とずいとんさんも分かりません。ここで、読み手は「間」を入れて、読者に絵を見せながら、「きつねは、どこにかくれているのかな」と声かけするのも、おもしろいでしょう。きつねがご本尊に化けていることに、読者は気つくでしょうか。

      ・・・

※『ずいとんさん』 日野十成再話、斎藤隆夫絵。福音館書店 2005年  (2023/10/1)

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