ふるはしかずおの絵本ブログ3

『気のいい火山弾』-ベゴ石はなぜ怒らないのか

宮沢賢治の考え方をベゴ石に見ることができます。

      

     

  ある死火山のすそ野のかしわの木のかげに 、

  「ベゴ」というあだ名の大きな黒い石が 

  永いことじいっと座っていました。

      

  

  非常に、たちがよくて、

  一ぺんも 怒ったことがないのでした。

     

     

 稜のある石は、

 そんなベゴ石を からかい、バカにします。

 かしわの木は、うぬぼれています。

 おみなえしは、

 冬の到来に 肝をつぶします。

      

     

蚊が、悪口を言いました。

 

  ベゴ石のごときは、何のやくにもたたない。

      

   

ベゴ石の上の苔は、

蚊の悪口を聞いて、

いよいよベゴ石を 馬鹿にします。

      

  

  べゴ黒助、ベゴ黒助

  黒助 どんどん

  千年たっても、黒助 どんどん

  万年たっても、黒助 どんどん

      

 

それでも、べゴ石は怒りませんでした。

     

   

ある日、

4人の人たちが、やって来ました。

「あ、あった。実にいゝ標本だね」

「こんな立派な火山弾は、大英博物館にだってないぜ」

       

ベゴ石は、

「東京帝国大学校 地質学教室」

へ運ばれることになったのです。

    

     

最後に、仲間のみんなに ベゴ石は 言いました。

  

「私の行くところは、こゝのやうに明るい楽しいところではありません。けれども、私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。さよなら。みなさん」

       

         ・・・

ベゴ石は、そこにあるだけで、みんなの役にたってます。かしわも苔も、ベゴ石のおかげで 成長できました。

       

 すべてのものに、無駄がありません。

 すべてのものは、変化します。

       

自然の理法を あるがままに受けいれる、ベゴ石です。

火山の爆発の絵は、迫力があります。また、べゴ石の歌の画面の絵は、印象的です。

          ・・・

※ 『 気のいい 火山弾 』  宮沢賢治作、 田中清代絵、 ミキハウス 2010年  (2025/1/22)

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