ふるはしかずおの絵本ブログ3

『おまえ うまそうだな』- 親になるティラノサウルス

宮西達也さんの人気の絵本です。

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むかし むかし おおむかし。
アンキロサウルスの(植物食恐竜)あかちゃんが生まれます。
でも、ひとりぼっちです。
「ガオー!」
ティラノサウルスがやってきました。
「ひひひひ・・・おまえ うまそうだな」。
・・・
アンキロサウルスのあかちゃんは、「おとうさーん!」。
ティラノサウルスに、しがみつきました。
(でも、なぜしがみついたのでしょうか?)

アンキロサウルスのあかちゃんは、
「おまえ うまそうだな(美味そう)」を自分の名前と勘違いしてしまったのです。
「ぼくのなまえ、ウマソウ なんでしょ?」
名前を知っているんだから、ぼくのおとうさんだよね。
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ティラノサウルスは、ウマソウを育てることにします。
おとうさんみたいになりたい」という ウマソウ。
そこへ、
キランタイサウルスが、ウマソウを食べようとします。
バッシーン
ティラノサウルスは、ウマソウを守りました。
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つぎの日
感謝の気持ちから、ぼくは赤い実を取ってきて、ティラノサウルスに渡します。
ティラノサウルスは「ウマソウ」(ぼく)にいろいろなことを教えてくれます。
体当たり、
しっぽの使い方、
ほえかたを。
おとうさんみたいになりたい」と思うウマソウ。
教えることがなくなったティラノサウルスは、別れを切りだします。

山まで競争して勝てば、いっしょにいてよいといいます。
ウマソウは、どんどん走りました。
そして、仲間のアンキロサウルス(親?)に出会います。
それを見たティラノサウルスは、つぶやきます。
「さようなら ウマソウ……」。
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おはなしを読む前と後では、何かが変わっています。絵本『スイミー』のように、主人公のスイミーが賢く勇敢な人物に変わったり、人物たちが生きる状況が変化したり、また人物像や状況が変わらなくでも読者の認識が変わることがあります。
この絵本の場合、「おとうさんみたいになりたい」というウマソウの言葉がくりかえされます。「おとうさんみたいになりたい」というウマソウの言葉に応えて、ティラノサウルスはどんどん変わっていきます。キランタイサウルスから必死にウマソウを守ったり、慰めたり、体当たりや吠え方を教えたりしています。大人の読者は、父親となっていくティラノサウルスに共感します。
「さようなら ウマソウ……」という言葉に、「親」となったティラノサウルスの深い思いを感じます。子どもの成長のため、あたらしい環境のもとで育ってほしいと願っているようです。子どもが成長して親元を離れる、別れの切なさもあります。また、「うまそう」を自分の名前と勘違いするユーモアもあります。『 おまえ うまそうだな 』は、子どもだけでなく大人の共感を呼ぶ絵本です。

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※『 おまえ うまそうだな 』 宮西 達也作・絵 ポプラ社  2003年 (2019/3/12)

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