ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くいしんぼうのはなこさん』- シンプルなストーリーと魅力的な絵

石井桃子と中谷千代子の絵本です。50年以上も前にこんな絵本が出ていました。

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こうしのはなこさん

わがままなはなこさん。

ごちそうばかり食べるはなこさん。

むくむく むくむく 大きくなりました。

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春が来ました。

はなこさんは山の牧場へ行きました。そこは、こうしたちでいっぱいです。

こうしたちは、

あっちでも ちゃんちゃん

こっちでも ちゃんちゃん

力くらべです。

最後に勝ったのは、はなこさん。

はなこは、山の牧場の女王です。
わがままなはなこさんは、

みんな ちょっと おまち!」おおきな池にはじめに入ります。

「みんな ちょっと おまち!」涼しい木陰もひとり占めです。

「うもう! みんな ちょっと おまち!!」

はなこは、おいもも かぼちゃも おなかいっぱい食べました。

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つぎの朝、

はなこは、アドバルーンのように膨らんでしまいました。

「はなこさん、はなこさん、どうしたのよう!」

はなこさんは、涙をこぼして言います。

「おなかが いっぱいで……くるしくて……くちもきけないの……は、は、はれつしそうなの……」

みんな おおさわぎ。

獣医さんが、言いました。

これは、まちがいなく たべすぎです。・・・ガスを ぬきましょう

      ・・・

「ぷすっ!」

「うもおう……」

「すすすすす……」

「うまくいった!」

「うもおう!」

はなこが、うれしそうに鳴きました。

「はなこさん、ばくはつしないで よかったわねえ!」(笑)

「ありがとう」

はなこは、恥ずかしそうに言いました。

それから、はなこが おとなしい こうしになったこは、みなさんにも おわかりでしょう。

      ・・・

シンプルで面白いストーリーです。「みんな ちょっと おまち!」と言う姐御のような言葉使いが笑えます。牧場の女王になったはなこさんに、ぴったりの表現です。そのはなこさんが食べすぎて「くるしくて……くちもきけないの……は、は、はれつしそうなの……」という場面も気の毒ですが、笑えます。

     
食いしん坊でわがままなはなこさんは、食べ過ぎを経験して変わっていきました。最後の場面は「はなこが おとなしい こうしになったのは、みなさんにも おわかりでしょう」という語り手の読者への語りかけで終わっています。読者もきっと頷いていることでしょう。

中谷千代子さんのはなこさんの絵も素敵です。かわいい表情をしています。ずいぶん昔の絵本になりましたが、子どもたちに出合わせたい絵本です。

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※『くいしんぼうのはなこさん』石井桃子作、中谷千代子絵、福音館書店 1965年  (2022/2/14)

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