ふるはしかずおの絵本ブログ3

『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦』

第一次世界大戦(1914-1918)の戦場で起きた、クリスマス休戦(1914年)を描いた絵本です。

     

        ・・・

1914年12月24日の 夜、

イギリス軍の兵士は、

ドイツ軍の塹壕から 歌声が聞こえてくることに 気づきました。

  

 「きよし このよる

 「もろびと こぞりて

 「みつかい うたいて

  

翌日の25日の朝、

ドイツ軍の塹壕に、手をふる兵士が 見えました。

銃をもたずに、出てきました。

手をふって、出てくるように さそっています。

  

イギリスの若い兵士が、両手をあげ 出ていきました。

ふたりは、近づきました。

兵士たちは、銃をかまえたまま、見守っていました。

  

 「メリー・クリスマス

   

塹壕の 兵士たちは、みな 出てきました。

クリスマスの歌を うたい、

写真を 見せ合い、

食べ物を わけあい、

写真を とったり、

乾杯を したり・・・

   

若い兵士が、上着をまるめ、サッカーボールにしました。

サッカーが、始まりました。

ボールを追い、

はしり、

ドリブルをして、

ゴールに蹴りました。

 

 

夕方になり、

握手をして、

また会う約束をして、

自分たちの塹壕に 帰りました。

  

1914年12月25日、ほんとうにあった話です。

戦場のほかの場所でも、同じようなことが いくつもありました。

  

         ・・・    

第一次世界大戦は、この後、約4年続きました。1918年 11月11日の終結まて、3度のクリスマスがありましたが、クリスマス休戦は2度と起こりませんでした。戦場と言う極限状況のなかで、こうしたことがあったことは、けっして忘れてはならないことです。兵士たちは、敵がどのような人間であるのかが分かりました。しかし、今日、敵味方なくクリスマスをお祝いしたのに、明日、また殺し合う現実がやってきます。お互いを理解した後に、戦いをはじめなければなりませんでした。クリスマス停戦は、高貴な人間性のあらわれであるだけでなく、戦争の非情さ、残酷さを表現しています。

    

第一次世界大戦では、1600万人以上の人が死亡したと推定されています。

   

最後のページに、民族衣装を着た、子どもたちが輪にになっている絵があります。世界中の子どもたちが連帯するイメージです。その中に、ウクライナの国旗の色、黄色とブルーの服を着ている子どももいます。

   

また、スタンリー・キューブリック監督、カーク・ダグラス主演の『突撃』(1957年)という映画があります。第一次世界大戦時の軍隊の非情さ、不条理、非人道性を描いた反戦映画です。

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※『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦』 すずきまもる文・絵、あすなろ書房 2022年  (2023/8/10)

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