ふるはしかずおの絵本ブログ3

『モナのとり』- 「とり」はモナの不安を象徴する

モナは、戦争で祖国を追われ、フランスにのがれてきた難民です。

わたしは、モナ。年は 8さい。

  

 フランス語の かきとりは 得意だけど、

 さんすうは、苦手。

 おどりを ならっているの。

 おどりって、とても たのしくて きれい。

    

   

でも、わたしは、みんなと おなじ じゃない・・・

 

 わたしには、くろいとりが ついてくる。

 どこにも、

 なにを していても

 すぐ そばに いるんだ。

   

 わたしのクラスの モーリシオもそう。

 おとうさん、おかあさんにも くろいとりが ついているんだ。   

 わたしたちは しんせきの おばさんのいえに すんでいるの。

       

     

わからないんだ

なぜ

わたしたちには、なんの権利もないのか。

     

おとうさんは はなしてくれた。

   

 「ぼくたち かぞくは とおい くにから きたんだ・・・

  そこでは、せんそうが、おこっているんだ」

 

 

ある朝から、モーリシオが、学校に こなくなった。

わたしも せんそうを している くにに

おくりかえさたら どうしよう。

わたしに けいさつが きたら・・・

   

      

きょうは はっぴょうかいの 日

いきよいよく 舞台に あがった。

りょうあしが、とんでいるみたい

からだが とても かるい・・・

    

はっぴょうかいのあと、

おとうさんと、産婦人科にいって、おかあさんと うまれた弟に あったの。

かえりのバスのなかで おとうさんが いってくれたの。

  

 「モナ、とっても うつくしかった

  きみは、おとうさんの ほこりだ

  みんな、うまく いくからね」

    

          ・・・

モナ、おとうさん、おかあさんにもついている「くろいとり」は、難民生活の不安なこころを表現しています。戦争は、モナたちの日常生活に大きな影を落としています。ダンスの発表会がありますが、読者は、モナの不安なこころを知っていますので、楽しいだけではない複雑な思いになります。

     

最後の絵に、飛び去る「くろいとり」が描かれています。家族の未来を暗示するかのようです。「みんな、うまく いくからね」とおとうさん。「・・・そう、みんな うまくいく・・・」と思うモナ。こころ動かされることばです。モナの願いが実現することを願わざるをえません。

     

       ・・・

※『モナのとり』 サンドラ・ポワロ=シェリフ作、水橋はな訳、新日本出版社 2022年  (2024/3/25)

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