ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ジオジオのかんむり』- かんむりが鳥の巣になる!

老いを感じたジオジオの生き方に、惹かれます。

       ・・・

若いジオジオは、

ライオンの中でも 一番強い ライオンでした。

ジオジオの冠が ピカッとひかると、みんな かくれてしまいます。

  

ある時、

ジオジオは 水のなかを のぞきました。

水に うつった 自分を見て、

おや、

白髪が ある。

目が よく見えなくなってきた、と気づきました。

  

 

灰色の鳥が、ジオジオに はなしかけました。

 

  ジオジオの おうさま、つまらなそうですね。

  わたしも つまんないんです・・・

  むっつも あった たまごが、

  みんな なくなって しまったんですよ。

 

ヒョウとヘビに 食べられ、ひとつは 川に落としてしまった、

と、鳥は、身の上を語りました。

  

 

ジオジオは 言いました。

おれの かんむりの中で、

卵を育てれば、どうだろう。

  

鳥は、よろこび、ジオジオのかんむりに 巣を作りました。

 

ジオジオのかんむりのなかに、

卵を 産みました。

 

 「たまごの ぐあいは どうかね

 「ぐあい よさそうですよ、おおさま

 

夕立ちが 降っても、

夜でも 

鳥は、安心でした。

ヒョウもヘビも、ジオジオには ちかよれません。

  

春。

ちっち ちっち 

ひなが、ななつ うまれました。

ななつの ことりは、

ジオジオの たてがみや しっぽに とまって 鳴きました。

 

ジオジオは、目が よく見えません。

でも、

ことりの声を うれしそうに 聞いていました。

    

目がよく見えなくなったジオジオ。老いを迎えたジオジオ。誰かのため、なにか役に立ちたいと考えたジオジオです。

いっぽう、かんむりの中で、うまれた小鳥たち。ふたりの人物設定が興味を引きます。誕生と老いがテーマになっていると気がつきました。

 

老いたことを感じたジオジオは、自分のかんむりのなかで、たまごを育てました。権威の象徴だったジオジオのかんむりは、鳥の巣になり、その意味を変えました。子どもの本ですが、ジオジオの行動には、大人にも訴えるものがあります。

    ・・・

※『ジオジオの かんむり』  岸田衿子作、中谷千代子絵、福音館書店 1978年 (2023/6/9)

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