ふるはしかずおの絵本ブログ3

『まっくろネリノ』- 「ぼく」(ネリノ) の気持ちを語る一人称視点

『まっくろネリノ』 は出版されて50年以上も経ちます。 1968年「オーストリア児童文学賞」を受賞した作品で、いまでも愛され読まれています。

 

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まっくろネリノの家族は、

とうさんとかあさん、

にいさんが 4人。みんな、色とりどり。

ネリノは、まくっろ。

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にいさんたちは、まっくろなネリノと遊んでくれません。

いつも、ひとりでじっとしている ネリノ。

まっくろ ネリノ。

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ある日、

にいさんたちは、捕えられ、鳥かごに入れらてしまいました。

かわいそうに、

どうしたら、すくってあげらるだろう。

ネリノは考えます。

そうだ、

ぼくは、まっくろ。

夜になるのを待って、助けよう・・・

ネリノは、にいさんたちを助けに行きます。

外は、まっくろ。闇夜です。

まっくろは、ネリノの色。

だから、誰にも見つかりません・・・

 
ネリノは、
にいさんたちを助け出すことができました。

いまでは、みんないっしょです。

もう、ひとりではありません。

悲しくなんかありませんでした。

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黒を基調としたパステル画が美しい作品です。
シンプルなおはなしですが、にいさんたちを助け出す冒険があります。絵本の文章は、上の紹介文とは違い、「ぼく」(ネリノ)の気持ちを語る一人称視点です。「ぼくは こんなに まっくろくろだろ」と自分のことを語り、捕まった兄たちに対して「かわいそうに、きのどくな にいさんたち」と気持ちを語ります。聞き手に語りかけるような口調です。読者は「ぼく」に親近感をおぼえることでしょう。「ぼく」といっしょにおはなしを体験します。

一人称視点の場合、「ぼく」「わたし」「おれ」の心情の移り変わりを読み取るのが鍵です。

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※『まっくろネリノ』ヘルガ・ガルラー作・絵、矢川澄子訳、偕成社 1973年  (2021/7/30)

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