ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 てんぐだいこ 』- 鼻が伸びる奇想天外なおはなし

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子どもの頃に読んだ昔話です。
     ・・・
 むかし、
 あるところに、げんごろうさんと いう人が いました。
 ある日の こと
・・・
     
たたくと、鼻がのびちぢみする ふしぎな太鼓をひろいました。
お金持ちの むすめさんに向かって、
ぽんぽんぽん。
むすめさんの鼻は みるみるのびて 天狗のようになりました。
寝込んでしまった むすめさん。
「えー。はなの びょうき なおしましょう。」
とげんごろうさん。
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招き入れられた げんごろうさんは、
「はな ひくくなれ。」とたいこをたたいて むすめさんの鼻を元通りにします。
 (でも、すぐに治すのではなく、七日目にです。)
げんごろうさんは、鼻を治したお礼に、小判をどっさりもらいます。
 (したたかな人物です。)
     ・・・
あるとき、
げんごろうさんは、鼻がどこまで伸びるか試してみたくなりました。
ぽんぽん
すると、鼻は にょきにょき
ぽんぽこ ぽんぽこ ぽんぽんぽん
鼻は、
のびて のびて のびて
とうとう 天まで のびました。
天で、橋をかける工事をしていた男は
鼻を らんかんに くくりつけてしまいました。
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鼻が むずむずする げんごろうさん。
短くしようと、げんごろうさんは、ぽんぽこ ぽんぽこ たいこをたたきます。
鼻は ぐんぐん ちぢまります。
ぽんぽこ 
「ありゃありゃ」
ぽんぽこ ぽんぽこ 
「ありゃ りゃ りゃ りゃ」(笑)
    ・・・
天で、鬼たちにつかまり、雨を降らす手伝いをさせられます。
雨を降らすのが 面白くなった げんごろうさん。
でも、足をすべらし
どーん。
おちたところは 琵琶湖。
あぷあぷ ぱしゃぱしゃ
泳ぐうちに げんごろうさんは ふな(ゲンゴロウブナ)になったという おはなし。
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奇想天外な笑い話です。鼻がのびたり縮んだりする場面がやはりおもしろい。たいこを叩いて意気揚々のげんごろうさん。でも、このたいこは、げんごろうさんの「うぬぼれ」を象徴するものと言えるでしょう。
鼻が縮んで天まで登っていくところは、げんごろうさんのあわてぶりが目に見えるようです。読みかたりの楽しいところです。抜け目のないげんごろうさんの性格もしっかりと描かれています。オノマトペもたっぷり。情と景が直感的にわかります。
     ・・・
※『てんぐだいこ』 神沢 利子文、赤羽 末吉絵、 偕成社 1986年
【 追記 】
子どもの頃に読んだ昔話といいましたが、私の場合は、岩波書店の『ふしぎなたいこ』(石井桃子作、清水崑絵)でした。1953年に出ています。今でも手に入れることができます。  (2018/12/22)

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