ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 小さい りょうしさん 』- 海は いつだって 大きい

00
うつくしい文章と 温かみのある絵。
1945年に出版された 名作絵本です。
2008年、アメリカで 復刻されました。
     ・・・
ある港に、
大きいりょうしさんと、
小さいりょうしさんが いました。
    ・・・
大きいりょうしさんは、
大きい 船に、
大きい 水夫たちを のせ、
大きな 道具(ロープ、バケツ、ブラシ、あみ、ハンモック)をつみこんで、海に のりだしました。
11
小さいりょうしさんは、
小さい 水夫たちを、
小さい 船にのせ、
小さな 道具(ロープ、バケツ、ブラシ、あみ、ハンモック)をつみこんで、海に のりだしました。
      ・・・
もやいづなを はなせ!
錨を上げ、帆を張り、
2隻の船は、大きい波、小さい波を こえて、沖へ 進んでいきます。
      ・・・
大きいりょうしさんは、
大きい 重りをつけた ロープをたらし、
大きい 網を 海に入れます。
小さいりょうしさんも、
小さな 重りを なげ入れ、
小さい 網を 海に入れます。
      ・・・
ふたりは、
一週間、魚をとりつづけ、船をいっぱいにして 帰ります。
大きいりょうしさんは、
ぽんぽん はねる 大きなさかな。
小さいりょうしさんは、
きらきら ぴかぴか、ぴちゃぴちゃ ぺちゃぺちゃ、ぴちぴち ぱちぱち、ちいさなさかな。
22
そして、家に 帰ります。
大きな家と 
小さな家に。 
大きいりょうしさんは、小さいさかなの 話を、
小さいりょうしさんは、大きいさかなの 話を、
家族にします。
     
 小さな うみってのは ないのです。
 うみは いつだって 大きいから。

     
A(大きい漁師)とB(小さい漁師)、AB、AB、AB・・・と文章がつづきます。対句のような文章ですが、それが形式的な美しさをうみだしています。形式美をもったリズミカルな文章は、マーガレット・ワイズ・ブラウン (1910年-1952年) の絵本の特徴のひとつです。ふたり(AとB)は、大きい 海で結びつき、ひとつになります。その海で、ふたりは 暮らしをたてています
うみは いつだって 大きいから」 です。
また、画家のダーロフ・イプカー(1917-2017)は、とても温かみのある絵を描きました。
33
※『小さいりょうしさん』  マーガレット・ワイズ・ブラウン文  ダーロフ・イプカー絵  やましたはるお訳 BL出版 2012年 (1945年初版)  (2017/10/29)

SHARE