ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 世界に パーレ ただひとり 』  -世界に、あなた、ひとりだけだったら。

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世界にひとりだけになったらという、ファンタジーの絵本です。

       ・・・

パーレが、

朝、おきると、

もう 、お日さまがかがやいています。

しかし、

どこにも、

誰もいません。

家にも、  

町にも、  

誰もいないのです。

世界にパーレただひとりです。

       ・・・

バーレは、何だってできるのです。

お菓子や くだものを いっぱいたべたり、

バスや消防自動車にのったり、

テニスのラケットや 飛行機のおもちゃだって。

「 はいるな 」という芝生だってへっちゃら。

叱るひとはいません。

     ・・・

なんでも自分のもの

パーレは、欲望のままに 自由にふるまいます。

        ・・・

しかし、

おはなしの後半では、「 世界に パーレ ただひとり 」という状況が、まったく ちがった意味をもってきます。

ひとりでは、

シーソーにのれません。

映画をうつしてくれる人も、

料理をつくってくれる人も   

いない!

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やっぱり、せかいじゅうに ひとりだけでは つまらない 

と、語り手は読者に語りかけます。読者も なるほどと思うことでしょう。最後は、お友だちと遊ぶパーレです。

 

      ・・・

 ほら、もう こうえんで おともだちと あそんでいますよ。 

 たのしそう ですね。

     ・・・

それは、

パーレが、いちばん望んでいたことです。

おはなしは、パーレの欲望を肯定しながら、

最後に、

みんなといっしょに暮らすことの大切さや楽しさがわかるようになっています。

このドラマづくりは見事です。

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ところで、「 せかいに パーレただひとり 」は、夢物語でした。パーレが、 朝、 ベッドで目をさますこと自体が、夢なのでした。夢のなかの世界とは気がつかずに、はじめから、読者は空想の世界に すっぽりとはいってしまうのです。たくみな手法です。そして、この夢( 絵本の世界 )のなかで、パーレも、読者も大切なことを体験しました。絵本を読むことの意味についても教えてくれています。

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※ 『 世界に パーレ ただひとり 』   イェンス・シースゴール作、  アンネ・ウンガーマン絵、  山野辺五十鈴訳、 偕成社 1978年 (2013/8/22)

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