ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 つる にょうぼう 』- 愛すればこその、哀切なわかれ
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うつくしい日本民話です。

雪ふかい山里に住むよ平は、貧しいまずしひとり暮らしの若者ででした。

     ・・・

冬のある日、

つばさに矢をうけた、鶴をたすけました。

その夜 おそく、

戸をたたくものがあります。

あけると、

ひとりの美しいむすめが たっています。

 

 女房にしてくださいまし

 

むすめは、はたを織ることをねがいます。

そして、三日三晩、

とんから とんから、

織りつづけ ました。

 

 けして のぞき見なさいませんように

 

よ平は、その織物を金にかえ、ふたりはたのしくすごしました。しかし、お金が少なくなると、はたを織ってほしいと言い出しかねているよ平に、むすめが言います。 

 

 もう一どだけ、 はたを織りましょう。

 でも もう、 これっきりにしてくださいまし

 

こんどは

四日四晩 かかりました。

よ平は、男にもうけばなしを吹きこまれ、お金のことばかり言い出すようになります。

むすめは、もう一度だけ、
はたを織ることにします。 

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 二どと ふたたび織れませんけれど。

 ごしょうですから、 けして、のぞかずに

 

とんから とんから、

五日目。

のぞかずにとあれほど言われたのに、よ平は障子に手をかけました。

「 あ 」

彼の見た むすめとは?

一羽の鶴。

 

 あなたの おやさしい心が  したわしく、

 それだけを たよりに、

 おそばに うかがったのでした。

 どうぞ 末長く、 おしあわせに

   

そして、鶴は、一反の織物をのこして飛びさるのでした。

「鶴の恩返し」でしょうか ? 否。

むすめの愛の姿が描かれています。愛すればこそのかなしい別れです

     ・・・

※『 つる にょうぼう 』 矢川澄子再話   赤羽末吉絵   福音館書店   1979

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