ふるはしかずおの絵本ブログ3

『山はしっている』-「かわらないものは、生きること」

山に生きるものは、山に見守られている。

山に生きる多くの生きものが登場します。絵を見る楽しさがあります。

   

夜明け。

早起きの鳥たちが、飛び立つ。

シロイワヤギが、蹄の音を ひびかせあるきます。

ナキウサギが、 朝ご飯を たべはじめます。

     

 

 朝靄のなか、

 ヘラジカの親子が、朝ご飯を さがします。

 鳥たちが、さえずります。

 

 

柔らかな 日ざしのなか、

グズリが 獲物を探し、

シカが  木立で様子を うかがう。

ビーバーが ダムを つくります。

     

 

黄昏どき、

ハイイログマは、水遊びをします。

夕日が、川面に きらめく。

沈みゆく太陽が 山を 染め上げ、

マツヨイグサが、花を開き、

生きものたちは、寝床へ もどります。

夜のとばりが おりると、

ボブキャットが、からだを 伸ばします。

夜中に 

動きまわる 生きものたち。

ヤマネ、アライグマ、アメリカテン、コウモリ、キツネ、スカンク

ネズミは、捕まらないように 逃げていきます。

       

 

クロクマの子どもたちが 遊びます。

ホタルの光が ゆらめきます。

ムササビの出番です。ゆうゆうと 夜空を飛びます。

 

 

 真夜中、

 アメリカワシミミズクが、高い木から飛びたち、えものに襲いかかります。

 オオカミが 夜のみまわりを 続けます。

 ピュ-マが 岩にすわり、朝をまっています。

       

 

夜が朝になるように、世界も変わっていく。

永遠につづくこともあれば、進化するものもある。

かわらないものは、生きること。

山は知っている・・・

山の中に生きている、生きものたちの1日が詩情豊かに語られます。ひんやりした空気感、ぬくもり、黄昏どきのひかり、夜の闇のふかさ、冷たさといった、視覚と肌の感覚が刺激されます。この絵本のなかに人間は出てきません。しかし、生きものたちを見ているのは、読者であるわたしたち人間です。わたしたちも、かれらと同じ時の中で、自然の中で生きていることに 気づかされます。「かわらないものは、生きること」です。大人にすすめる絵本です。
       ・・・

※『山はしっている』リビー・ウォルデン作、リチャード・ジョーンズ絵、横山和江訳、鈴木出版 2020年  (2023/1/5)

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