ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ウルスリのすず』- ひとつ大きくなったウルスリ

アルプスの 山の奥に住む、

元気な男の子、ウルスリの冒険です。

 

明日は、

鈴行列の おまつりの日です。

今日は、ギアンおじさんに 鈴を借りにいきます。

 

 ウルスリは、

 大きな鈴を 持ちたかったのに

 大きい子どもたちに 負けて、

 いちばん 小さな鈴に なってしまいました。

 

 行列の先頭をすすみたい ウルスリ。

 鈴をひびかせたい ウルスリです。

 

 

鈴行列の おまつりは、

春をよろこぶおまつりです。

村のひとは、鈴の中に木の実や、肉や、お菓子を入れてくれます。

  

 

ウルスリは、

山の夏小屋に 大きな鈴があることを 思い出しました。

夏小屋へいく途中の、

ふかい森も、

せまい橋も、

ウルスリは、ちっとも こわくありません。

 

ウルスリは、やっとのこと、夕日をあびている 山小屋につきました。

ウルスリが、窓から もぐりこむと、

大きい鈴は、ちゃんと ありました。

 

 「あしたは、みんな、目をまるくするぞ!

 

 ずっしり重くて、まるくて、皮のおびには花のししゅう。

 とめがねは、金色に かがやいているし、

 その鈴の音の、すみきっい、よくひびきわたること!

 

ウルスリは、ぐっすり 眠りました。

 

 

ウルスリが見えなくなった 村では みんなで さがしまわります。

おかあさんは 泣いています。

ふたりは、眠れずに 朝をまちました。

  

 

朝、

ウルスリは、山を下ります。

かけ降りていきます。

 

 コン、コン、コン

 

ドアがひらき、おかあさんは、むすこを 抱きしめました。

  

 

鈴の行列がやってきました。

 

 先頭にいるのは、だれかしら? ばんざい!

 小さなウルスリです・・・リンラン、リンラン・・・

 ウルスリは、いちばん大きな鈴をもっていますよ!

 

ウルスリの冒険話、成長物語です。

ウルスリが主人公ですが、ウルスリを迎えいれる両親のすがたが印象的でした。最後のページには、ウルスリ一家の夕食のシーンが描かれています。生クリームのたっぷりかかった蒸した栗、パン、くだものが並んでいます。三人の会話が聞こえそうです。ウルスリは、鈴行列のことや、山小屋への冒険を語っていることでしょう。家族の温かさが表現されています。

 

でも、両親がどんなに心配したか、村の人たちが総出でウルスリを探したことも、きっと話されたことでしょう。

 

語り手は、絵本のなかで、「だれかしら? ばんざい」「ウルスリは、いちばん大きな鈴をもっていますよ!」と語っています。自分の気持ちを表現しています。語り手が話に参加して、自分の主観を表現するのは、幼児の文芸によく見られることですが、この絵本の特徴のひとつです。

    

       ・・・

※『ウルスリのすず』 ゼリーナ・ヘンツ文 アロイス・カリジェ絵 大塚勇三訳 岩波書店 2018年    (2023/6/25)

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