ふるはしかずおの絵本ブログ3

『なんでもふたつ』-ふしぎな甕


中国の昔話です。

貧乏なハクタクじいさんとばあさんは、不思議な甕を手にいれました。入れたものが何でも二つになるという甕です。甕を手に入れたハクタクじいさんとばあさんは、さてさて、どうなることでしょうか。

      ・・・

ある春の朝、

ハクタクじいさんが、

庭を耕していると、真鍮でできた古い大きな かめを見つけました。

運ぶ途中で、

ハクタクじいさんは、かめのなかにサイフを落としてしまいました。

金貨が5枚の全財産です。

   

家では、

かめをのぞきこんだおばあさんが、ひとつしかない髪飾りを落としてしまいました。

おばあさんが、拾い上げてみると、

髪飾りも

サイフも、2つになっていました

なんでもふたつになる不思議なかめ。

ハクタクおばあさんは、金貨をかめにいれました。

「こうすれば どんどん おかねが ばいに なる」

やがて、家は、金貨でいっぱいになりました。

       ・・・

おばあさんは、かめに向かって言いました。

「かめさんや・・・おまえさんは わたしの いちばんの ともだちだよ」

その時、戸がバタン。

家に帰ってきたおじいさんにびっくりしたばあさんは、かめのなかに頭からつっこんでしまいました。

おじいさんが、つかみだすと

なんと、

おばあさんが、ふたりになっています

       ・・・

じいさんも、よろけて かめの中に頭からつっこんでしまいました。

 (ということは・・・)

じいさんも、ふたりになりました。

「まあまあ・・・きょうだいが できたような もんだし。・・・こまることは ありませんよ」とおばあさん。

        ・・・

ふた組のハクタクさんたちは、2軒の素敵な家をたてました。あたらしいハクタクさんと、むかしからのハクタクさんは、仲の良い友達になりました。村のひとたちは、「おおがねもちに なったから なんでも ふたつに したんだな。じぶんたちまも!」と思いました

おおらかな笑い話です。

何でもふたつにできる甕を手にいれることができたら、どんなに幸せなことでしょう。羨ましい限りです。お金に困ることは絶対にありません。庶民の願いです。そして、おはなしはハッピーエンドでした。

 

「2」(ふたつ)については、「中国語で”和諧(調和がとれている)の意味」があり、中国では縁起の良い数字として捉えられていることを知りました。

 

それでも・・・

何でもふたつにできる甕を持っていることは、本当に幸せなことなのかな? と思います。ふた組になったハクタクさんの後日談が知りたくなりました。

        ・・・

※『 なんでも ふたつ 』リリー・トイ・ホン作 せきみふゆ訳 評論社 2005年   

                       (2022/1/30)

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