ふるはしかずおの絵本ブログ3

『だごだご ころころ』- 団子、赤とんぼ、しゃもじ

「だご」は、方言で、団子のことです。

また、しゃもじが、たいせつな昔話の小道具です。

    

     ・・・

むかし むかし

気のいい じいさんと ばあさんが おったと。

    

山で、

ばあさんは、

くもの巣に かかっていた あかとんぼを 助けてやった。

    

次の日、

じいさんが 畑で 

だごを 食べようと すると、

ころころと ころがっていった。

はあさんは だごを 追いかけた。

だごは 川を 越え、

暗い あなに はいってしまったと。

  

そこは、鬼たちの住み家だった。

  

 「ばあさ、よくきた。・・・だごを つくってくれ

  このしゃもじで こなを まぜると たくさんになるのやぞ

   

ばあさんが、

だごを 山のように つくると、

おにたちは、

「あんまり うまいさかい、あしたも つくってくれ」

と いった。

   


家に 帰りたい ばあさんのところへ 

あかとんぼが 飛んできたと。

  

 「あさってな、おにどもの おまつりや。

  月がのぼったら、ばあさんのかげの 

  さすほうに にげられや」。

   

ばあさんは、しゃもじを かかえ、逃げだした。

赤とんぼは、

おばあさんを 乗せた船を こいで たすけた。

すると・・・

    

  

おにたちは、

川の水を ぐわっ ぐわっと 飲み込んだ。

ばあさんの 船は  

ずい ずいっと 

おにのほうに ひっぱられた。

   

ばあさんは、しゃもじを だしてね、

「えいこら ぎっこら ほーい ほい」と こいだ。

  

 がっぽ がっぽ

  

と 水がふえ、

おにどもの腹は ぱちーんと はれつして しまったと。

   

それからと いうもの、

宝の しゃもじで 

ふたりの暮らしは 楽になったと。

  

  かたってそうろう、かたらいでそうろう。

  

       ・・・

昔ばなしにも、絵にも、ユーモアがあります。舟を漕ぐ赤とんぼ、粉や川の水をふやす不思議なしゃもじが、『だごだご ころころ』のおもしろさに一役買っています。また、鬼たちの表情は、とてもゆたかです。鬼たちの表情を見る楽しみがあります。

でも、鬼たちに追いかけられる場面の展開は、迫力があり、スリルがあります。そして、ちょっと怖い。

         

結びの言葉は「かたってそうろう かたらいでそうろう」ですが、富山の昔話の決まり文句だそうです。

   

それにしても、この話、鬼の住処、あかとんぼ、しゃもじを題材にした落語の三題噺のようです。

       ・・・

※『だごだご ころころ』 石原なみ子・梶山俊夫再話、梶山俊夫絵、福音館書店 1993年  (2024/1/17)

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