ふるはしかずおの絵本ブログ3

『とべ!ちいさいプロペラき』-ちいさくたってできるんだ

はじめて空を飛ぶ、ちいさいプロペラきの はなしです。

       ・・・

ちいさいプロペラきが、

格納庫で、空へ飛びたつ日を 待っていました。

おおきな ジェットきが、入ってきました。

 

 なんて おおきいんだろう。

 

プロペラきは かんしんして しまいました。

おじさんが ちいさいプロペラきの エンジンを いれました。

 

 プルン プルルン プルン プルルン

 でも、

 きょうは、変な音です

 プルン プルルン プス プス

 どうしたことでしょう。

 プルン プス プス プスン

 

かぜでも ひいたのか・・・ゆっくり やすむんだな

  

その夜、ジェットきが 言いました。

 

 「まだ、そらを とんだことがないのかい?・・・

  いいエンジンを もってるな 音でわかるよ」

  

 「あなたは なんで どうどうとしているんでしょう」

   

 「げんきを おだし。ぷろぺらくん。

  ひろい そらでは、ぼくらの おおきさのことなど

  わすれてしまうよ

 

  

次の朝、

ジェットきも

プロペラきも 出発です。

 

ジェットきは、「がんばれよ」というと

ゴォーという音を ひびかせて 飛びたちました。

  

 

プロペラきの番です。

ひろくて ながい 滑走路は 空まで 続いているようです。

「さあ、いくぞ」

「はい」

 

プルン プルルン プルン プルルン

プロペラきは、ゆっくり はしり はじめます。

ゆっくり、ゆっくり

そして―

だんだん はやく。ブルン ブルルン ブルルン

もっと はやく。ブルルン ブルルン ブルルン

 

 「よし、とぶぞ。それ!」

 

 ダゥーン

 

ひこうじょうが、かんせいとうが、かっそうろが みえます。

ちいさい プロペラきは むねをはって

ちからいっぱい とびつづけました。

     

読者の子どもは、ちいさなプロペラきに同化して読んでいくでしょう。子どもたちには、ちいさなプロペラきのように、まわりが、みんな、大きく立派に見えていることと思います。

 

飛びたつ日、プロペラきは、ゆっくり はしり はじめました。

自分と同じような、ちいさなプロペラきが飛び立つシーンは、子どもたちにとって、とても印象的なところだと思います。ハラハラ・ドキドキの体験ですが、無事に飛び立つちいさなプロペラきに、「やったね」と言ってあげたい気持ちになることでしょう。

ちいさくたってできるんだと、プロペラきから勇気をもらいます。

      ・・・

※『とべ!ちいさいプロペラき』 小風さち作、山本忠敬絵、福音館書店 2000年  (2023/6/19)

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