ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ちいさなねこ』- ハラハラ・ドキドキのこねこの冒険です 

ちいさなこねこの冒険です。

    

 ちいさな ねこが 庭におりて、はしりだした。

 どんどん はしっていく。

    

おかさんのねこは、それを知りません。

こどもが こねこを つかまえた。

でも、こどもの手を ひっかいて にげだした。

     

 あぶない! 

 自動車にひかれる。

 自動車は ブレーキをかけて、とまった。

 自動車のしたから、ねこの顔がのぞいた。

 

 よかった! 

    

むこうから おおきな いぬが やってきた。

おおきな いぬは こねこを とおせんぼ。

こねこは おおきな いぬの 鼻をひっかき にげだした。

     

 いぬが おいかける。

 ねこは 木に のぼった。

 いぬは 木に のぼれない。

         

でも、いぬは、木のしたにいる。

木のてっぺんで、

にゃお! にゃお!」となくと、

 

      

おかあさんねこが、声をききつけた。

おかあさんねこは、かけだし、こねこを さがしにいく。

いた いた。

おかあさんねこは、

「ふうっ!」

「ちいっ!」とおこって、いぬを おいはらった。

 

木にのぼり、こねこを くちにくわえて おりてきた。

そして、うちへかえってゆく。

ちいさなこねこは おかさんの おっぱいを のんでいる。

50年以上もむかしの絵本ですが、これからも残ってほしい絵本です。外の世界に知ろうとする、ちいさなねこ。それは子どもの姿です。 知りたいこねこ。冒険したいこねこです。

 

ハラハラ・ドキドキのこねこの冒険を簡潔な言葉で描いています。見守るおかあさん。おっぱいを飲むこねこのなんと可愛いことでしょう。おかあさんの安心した表情が印象的です。

また、「ひとりで でかけて だいじょうぶかな」という語り手のおはなしへの参加とやさしい眼差しもあります。

なんでも知りたい子ども、子を愛し見守るおかあさん。この真実はいまも変わりません。

        

※『ちいさなねこ』 石井桃子作、横内襄絵、福音館書店  1967年

   

【追記】

石井桃子さんが、つぎのように語られていたことを知りました。

「こういう筋のある本に、小さい子どもたちがいつから入っていくのか、とても興味があるんです。前のページと次のページの、つながりができるということ。ページをめくって場面が移り変わる時に、子どもの心に起こる変化って、人間の一生にとって、本当に大事なものじゃないかと思うんです。」(「こどものとも年中向き」2000年8月号折り込みふろくより)  (2022/10/15)

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