ふるはしかずおの絵本ブログ3

[覚え書き1] 絵本に命を吹き込む、読み手の主体的な読み


西洋の五線譜は大変便利な記譜法だが、なお不備は免れない。ことに音色、響きの質、肌触りなどは表記しにくく、それをどう処理するかは演奏家の好みと思想の根本にかかわる。」( 吉田秀和 )

・・・

著名な音楽評論家、吉田秀和の言うように「音色、響きの質、肌触りなど」は、五線譜に表記しにくいものです。そして、この指摘は音楽だけでなく絵本を読みかたりにも当てはまるように思います。

・・・
読み手は、絵本の文章に命を吹き込みます。ことばは音声の中で生きてきます。音声によって作品世界を彩り描きだします。トーン、イントネーション、間、読みのテンポ、ニュアンス、雰囲気を読みとり、「声」によってその世界を創造し、表現します。読み手は、絵本の「演奏家」だといえるでしょう。
・・・
子どもたちは、絵本の中で想像力を羽ばたかせ、ゆたかなイメージを描きます。そして、そのことによって、子どもたちの文芸の体験(うれしさ、悲しさ、たのしさ、うたがわしさ、不安、緊張、喜び、期待、想像、安心、そしてこれらの感情のないまぜになった芸術的体験)は切実なものになります。
・・・

絵本の読みかたりにおいて大切なことは、読者のこの切実な体験をつくることです。それをどのようにつくるかは、読み手の仕事であり、読み手の「好みと思想の根本」にかかわります。   (2019/2/1)

SHARE