ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ぞうになったうそ』- あたらしい感情を体験した「ぼく」

うそをついたらどんな気持ちになるのでしょうか?

「ぼく」のうそは、「ぞう」になって現れました。

      ・・・

サッカーをしていた 「ぼく」(リュカ)。

ぼくは、窓ガラスにボールをぶつけてしまいました。

 

 ガチャ―ン!

 

ぼくは、おとうさんに うそをついてしまった。

「ぼくじゃない。エミリだよ」

 

「エミリ、おしおきに いっしゅうかん デザートぬきだ!」

「わたしじゃないもん」

  

ぼくは おなかが ずんと おもくなった

その晩 よく ねむれなかった。

 

あさ おきると、

おなかは もっと おもくなった。

 

  あーあーあー、うそって たいへん。

 

うそは ふくれて ぞうみたいに おおきくなった。

どこにいくのでも ついてくる。

授業中も、

お昼のお弁当のときも、

休み時間のサッカーをしているときも、

 

その晩、

ママが、チョコレートムースをつくった。

でも、

エミリは もらえなかった。

泣き出すエミリ。

 

ぼくは どうしても我慢できなくなって、ほんとうのことを言った。

 

 「ガラスを わったのは、エミリじゃない。ぼくだよ

  ・・・ごめんなさい

  

ぞうが すがたを 消しました。

すごく 叱られたけど

ぼくのこころは ずーっと かるくなった。

 

 エミリとリュカは仲直りをします。

 ふたりで、いっしょに 本を読んでいます。

「うそ」をついた気持ちを「ぞう」で表現するユーモアあふれる絵本です。
うそをついた時の心の苦しさを、目に見える形で、子どもに分かりやすく表現しています。
   
ぼくは、うそをついたことで、いままでにない感情を体験しました。そして、うそをついたことを、正直に話して、ひとつ大きくなりました。ベルギーの人気絵本です。

  

フランスの文学史家・ポール・アザール(1878 – 1944)は、「よい本とは何か」ということのひとつに「高い道徳性を持った本」をあげ、つぎのように言っていました。

 

「悪口をいったり、嘘ばかりついている人間が、しまいには、口を開いてなにかいうたびに、まむしやがまが飛びだすようになってしまうといった話をのせた本を、わたしは愛する。つまりわたしは、真理と正義に対する信頼をつちかうことをその役目としているよう本を愛するのだ」(『本・子ども・大人』、矢崎源九郎、横山正矢訳、紀伊国屋書店)

       ・・・

※『ぞうになったうそ』ティエリー・ロブレヒト作、エステル・メーンス絵、ふしみみさを訳、パイインターナショナル  2022年

 

【 追 記 】

ポール・アザールのよい本とは(箇条書き)。

・芸術の本質に忠実である本。

・子どもたちが好んで頭に描くものをそのまま差しだしてやるような本。

・感受性を目覚めさせる本、人間らしい高貴な感情を子どもの心にもふきこむような本。

・遊びというものが大切な重要なものであることを認めている本。

・知識を与える本。

・人間の心情についての認識を子どもたちに与える本。

・高い道徳性をもった本。    (2023/2/26)

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