ふるはしかずおの絵本ブログ3

『にひきの かえる』- けんかをして、仲直り

けんかをした、2匹のかえるの 仲直りのはなしです。

      ・・・
緑のかえると 

黄色のかえるが、畑のまんなかで 出会います。


 「やあ、きみは黄色だね。きたない色だ。」

 「きみはじぶんを美しいと思っているのかね。」

 

売り言葉に、買い言葉です。

けんかをはじた ふたりの かえる。

 

そのとき、

寒い風が ふいてきました。

ふたりは、もうすぐ冬のやってくることを 思い出しました。

 

 「春になったら、このけんかの勝負をつける。」

 「いまいったことを わすれるな。」


ふたりは、土の中に もぐりこみました。
 

     ・・・

春が めぐってきました。

緑のかえるが 目をさましました。

 

 「おいおい、おきたまえ。もう春だぞ。」

 「やれやれ、春になったか。」

 

 「去年のけんか、わすれたか」

  と 緑のかえるが 言いました。

 「待て待て。からだの土を あらいおとしてからにしようぜ

  と 黄色のかえるが 言いました。

   

  

池は、ラムネのように すがすがしい水が いっぱいです。

ふたりは とぶん とぶんと 飛びこみました。

     

きれいになった ふたり。

「やあ、きみの黄色は美しい。」

「きみの緑だって すばらしいよ。」

二ひきのかえるは けんかはよそうと 言いあいました。

     

 よくねむったあとでは、

 人間でもかえるでも、

 きげんがよくなるものであります。

 

      ・・・

緑のかえると黄色のかえるの、けんかの原因は、互いの外見に対する悪口でした。小さなことがけんかの原因ですが、日常によくみられることでしょう。

しかし、冬眠のため、けんかは一時中断です。そして、冬眠から覚めたふたりは、水のなかに入り、からだの土を洗い流しました。きれいになった相手を見て、「やあ、きみの黄色は美しい」、「きみの緑だってすばらしいよ」と認め合うのです。ふたりは、お互いのよいところを見つけだしたのです。

 

欠点は目につくものです。目に飛び込んできます。しかし、よいところを見つけるには、それ相当の力が必要です。また、そこには相手に対する敬意があります。

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※『にひきの かえる』 新美南吉作、鈴木靖将絵、新樹社  2013年 (2023/3/31)

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