ふるはしかずおの絵本ブログ3

『しあわせな いぬに なるには-にんげんには ないしょだよ!』

語り手は「ぼく」。

でも、「ぼく」は、いぬです。

飼い主と、たのしく、しあわせに暮らすため、

いぬによる、いぬのための 指南書です。

   

       ・・・

 ぜんこくの いぬの みなさん ワンにちは!

 

まず、たいせつなのは、

「にんげんえらび」です。

「このひとだ」とおもったら、それは、運命の出会いです。

ぼくが そうでした。

     

家のなかでは、

寝心地の いいところを 見つけましょう。

飼い主には、「すき」という気持ちを おもいっきり、伝えて。

お客さんには、歓迎のあいさつを わすれずに。

でも、

いやなやつも いる。

     

 にんげんは おしっこを やたら 気にします。

   

食事のあとも、

なんにも 食べていない ふりをすると、

もういちど もらえることが あります。

    

いろんな芸ができると ごほうびが もらえるチャンス。

    

     

ボール遊びのときは、じぶんだけで 夢中にならないこと。

    

近所に 知り合いも ふえます。

気の合う ともだちが できたり、

できなかったり するでしょう。

    

いろいろ しているうちに、

すきなこと、

きらいなことが わかってきます。

   

 だいすきな かいぬしと いっしょなら

 まいにちが とっても たのしいはず!

 ぼく みたいにね!

     

       ・・・

しあわせに生きるコツを伝授した絵本。でも、それは、人間のなかで生きる、いぬに向けてでした。いぬの視点から見た、ユーモアあふれる世界です。たくさんのいぬがでてきますが、いぬの表情がいきいきしています。表情や動きも、見どころのひとつです。

  

想定される読者は、いぬ? 

(冗談です)

どうぶつのすきな子どもたちです。「いぬって、こんなことを考えているんだ」(?)という絵本体験です。いぬの言い分を聞くことで、他者を理解する、手の込んだ虚構の方法です。  

    

       ・・・

※『しあわせな いぬに なるには -にんげんには ないしょだよ!』 ジョー・ウィリアムソン作・絵 木坂涼訳、徳間書店 2016年

 

   

【追記】

夏目漱石は、視点人物を「猫」にして、『吾輩は猫である』を書きました。猫から見ると、人間のいろいろな不思議が見えてきます。例えば「土地所有」の観念です。猫の社会批評です。

    

「この茫々たる大地を、小賢しくも垣を囲らし棒杭を立てて某々所有地などと劃し限るのはあたかもかの蒼天に縄張して、この部分は我の天、あの部分は彼の天と届け出るような者だ。もし土地を切り刻んで一坪いくらの所有権を売買するなら我等が呼吸する空気を一尺立方に割って切売をしても善い訳である。空気の切売が出来ず、空の縄張が不当なら地面の私有も不合理ではないか。」

                             (2023/8/22)

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