ふるはしかずおの絵本ブログ3

『さくら』- 一人称視点で桜が語り手です

さくらの1年を描いた絵本です。

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わたしは き。

さくらの き。

なまえは ソメイヨシノ。

 (一人称視点、語り手は桜です)

ほうら、さいた!

満開の桜です。

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ひよどりやすずめに、花の蜜をわけてあげます。

そして、

落花。

地面に花びらの雪が積もります。

でも、

ほら、見て、見て。

葉っぱのあかちゃん

ぐんぐん のびて おおきくなる。

新緑の桜です。

さくらんぼが 赤くなります。

梅雨。

夏。
じーい じい じい

せみが 桜の幹で鳴いています。

虫たちは、葉っぱを食べています。

      ・・・

紅葉の秋。

北風が吹き始めます。

葉っぱが散っていきます。

でも、わたしのめ(芽)は、寒さの中で しずかに生きている。

 

春風が吹く頃、

め(芽)は、蕾になり、

のびる のびる ぐん ぐん ぐん。

ひとつの 花目から たくさんの花が咲きます。

 

みごと、みごと!

 

わたしは さくら。

ソメイヨシノ。

桜の1年を描きました。いのちある桜を表現しています。常敬体の散文詩のような文章です。生き生きとした桜の絵も素敵です。桜は春だけの木ではありません。1年を通して変化し成長していきます。

 

また、一人称視点で桜を語り手にしたことで、わたし(桜)のこころ、気持ちを表現することができました。「むしさんたち、はっぱを おたべ」「かぜよ ふけ、 さむさよ こい」「わたしの あかちゃんが うまれそう」。桜の声、桜のこころ、生きている桜をつよく実感します。

ソメイヨシノが、咲くのももうすぐです。

       

桜はソメイヨシノだけではありません。静岡県でいいますと、あたみ桜、河津桜はもう咲きました。裏表紙に、ヤマザラ、シダレザクラ、オオシマザクラ、カンザン、カンヒザクラの絵が描かれています。

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※『さくら』長谷川摂子作、矢間芳子絵、福音館書店 2010年 (2022/2/27)

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