ふるはしかずおの絵本ブログ3

『あるヘラジカの物語』- ヘラジカの死と命のつながり

角が絡んだ、2頭のヘラジカの骨の写真が裏表紙にあります。ヘラジカは、なぜ角を絡ませたまま骨になったのでしょうか。物語はこの写真から創造されました。

      ・・・

アラスカ

デナリ山のふもと。

1頭の大きなヘラジカが、たくさんのメスと暮らしてた。

ある日

見知らぬオスがやってきた。

      ・・・

オスどうしの激しい闘いが始まった。

ガシン ガシン。 大きなつのがぶつかる。

グオッ グオッ。 うなり声が響く。

ガシン ガシン ガツン ガツン

闘いは、何時間もつづく。

すると・・・

つのとつのが絡まって、外れなくなってしまった。

外れないから、2頭は闘いつづける。

    ・・・

ぐったりし、

ぜいぜいと喘ぐ2頭のヘラジカ。

ヘラジカの様子を見ていたオオカミは、遠吠えをして仲間を呼ぶ。

そして、

オオカミたちは、

ヘラジカに噛みつき、食べはじめた。

    ・・・

ヒグマがやって来た。

オオカミを追い払い

ヒグマは、ヘラジカを食べはじめた。

ヒグマが去ると、オオカミたちが戻ってくる。

オオカミたちが去ると

コヨーテ

アカギツネ

クズリ

ヘラジカを食べる。

     ・・・

カナダカケス

ワタリガラス

干からびた肉をつついている。

雪の中で、カンジキウサギが、ヘラジカのつのをカリカリと齧り始めた。

      ・・・

春、

夏、

秋、

冬、

そして、何度目かの春。

2頭のヘラジカは、あたまの骨だけになった。

アメリカタヒバリが、ヘラジカの骨に巣をつくり、たまごを生んだ。

ヘラジカの体重は800キロもあります。ヘラジカのたたかいは迫力がありました。ガシン ガシン、グオッ グオッ、ガツン ガツンのオノマトペが生きています。ヘラジカの力強いエネルギー。しかし、つのがからみあい疲弊した2頭のヘラジカ。まだ生きているヘラジカを襲うオオカミ。自然の過酷さを見ます。

  

ヘラジカの肉は、ヒグマ、オオカミ、コヨーテ、アカギツネ、グズり、カナダカケス、ワタリガラスに食べられます。大自然のドラマと命のつながりは、読者の子どもたちに深い感動を残すことでしょう。

      ・・・

※『あるヘラジカの物語』 星野道夫原案、鈴木まもる絵と文、あすなろ書房  2020年  (2021/8/10)

SHARE