ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 むらの 英雄 』- 笑い話ですが、どこかハッとする

エチオピアの昔話です。

      ・・・

むかし、

12にんの男たちが、

粉をひいてもらうために、マイ・エデカという町へいきました。

その帰り道のこと。

ひとりの男が、仲間が12人いるかどうか気になりました。

人数を数えましたが、自分を数え忘れたため、11人しかいません。

 (当たり前。)

      ・・・

「たいへんだ! だれかが いないぞ!」(笑い)

「いなくなったのは だれだ?」

「おまえさんが かぞえて みてくれ。」

2番目の男が かぞえてみました。

その男も、自分を数え忘れたため、やっぱり 11人しかいません。

「おまえの いうとおりだ。」

 (もう、筋はお分かりですね。)

3番目の男。「道に迷って ヒョウに やられたに ちがいない。」

4番目の男。 「もっと気をつけてやれば よかったなあ!」

5番目の男。 「そうとも そうとも・・・」

6番目の男。「ものすごく 大きなヒョウだったなあ」

7番目の男。「気がふれた めすの ヒョウだったぞ!

8番目の男。「武器も持たないで・・・勇敢に戦ったじゃないか!」

9番目の男。「怖いなんてことは ひとことも いわなかったぞ」

10番目の男。「残された おかみさんは なんと いうかなあ?」

11番目の男。「かわいそうな 家族じゃないか!」

12番目の男 。「勇敢だったばかりか、親切で優しい やつだったなあ

12人の男は、泣きながら村へかえってきました。

村はおおさわぎ。

そのとき、ちいさなおんなの子が、粉袋をかぞえてみると・・・

「おかあさん。袋は ここに 12あるよ。」

「静かにおし。えらい人が 死んだんだよ。」

でも、袋は12個。

 (まあ、そうですね。)

      ・・・

村長が数えてみました。

「ほう、ちゃんと 12にん おるわ。いなくなったやつが もどってきたぞ。」(笑い)

村人はおおよろこび。

みんなで、踊り、

歌をうたい、

ごちそうを食べて、

お祭りをしました。

それから 強くてたくましい英雄のはなしが つたえられました。

ユーモア溢れる楽しいおはなしです。 はなしに尾ひれがつくとは、このことです。「茄子を踏んで蛙と思う」人々の心理が背後にあります。

自分を数え忘れて仲間が足りないと思い込む12人の男たちの滑稽さ、いなくなった男のことを想像し、根も葉もないことを言いあうばか馬鹿しさ。これらを楽しむには、ある程度の年齢が必要かもしれません。男たちと村人の言動の非合理さを理解する常識が必要です。

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※『 むらの 英雄 』 わたなべ しげお文 にしむら しげお絵 瑞雲舎 2013年   (2019/4/19) 

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