ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くまさぶろう』- ひとのこころを盗む人物

くまさぶろうは 泥棒の 名人でした。

でも、他者に共感して、悲しみや痛みを受け止める、人物になりました。

    

    

くまさぶろうは

砂場の 子どもの シャベル

とこちゃんの コロッケ

紳士の 傘

かんちゃんの ミニカーを ぬすみました

    

動物園で 

ぞうを 見た くまさぶろうは

ぞうを ちぢめて ぬすみました

    

 「はなれているものは すいよせる。

 おおきなものは ちぢめてとる。

 どうだい、このうでまえ」

    

でも、夜に

ぞうは もとどおり

くまさぶろうは いえの外へ はじきだされて 

やどなしに なりました

    

   

何年か たちました 

レストランで

「ああ おいしかった おなか いっぱい」という 

おんなのひとの 気持ちを 

くまさぶろうは すいっと とって しまったのです

  

   

くまさぶろうの おなかは たちまち いっぱい

   

 「ああ おいしかった。うほっ

   

     

それからというもの、

くまさぶろうは

人のこころを ぬすみとることが できるように なりました

    

転んで

おでこに こぶたんが できた

りっちゃんの 気持ちを ぬきとると

りっちゃんは きゅうに元気に なりました

   

くまさぶろうの あたまには こぶたんが ぽっこん

   

 「いててて、ててて

    

いじめられている 

たっちゃんの 気持ちを とると

くまさぶろうは

じぶんが よわむしで なきむしで なさけなくなりました

     

   

でも、

元気な たっちゃんを見て 

かなしい気持ちが うれしさに かわるのでした

   

くまさぶろうは、旅を つづけています

泣きたい こどもの 気持ちや

かなしい こころを ぬすんであるくのです

    

            

くまさぶろうは、ものを盗む泥棒から、ひとの悲しみや痛みさをぬすむ「泥棒」になりました。こぶができたりっちゃんのこころ、友だちからいじめられているたっちゃんのこころを軽くしてあげています。くまさぶろうは、他者に共感して、悲しみなどを受け止める存在です。

    

ミヒャエル・エンデに『モモ』という作品がありますが、主人公のモモは、ひとの話をよく聞く人物として描かれています。泥棒のくまさぶろうは、ひとの話をよく聞くというわけではありませんが、ひとのこころをぬすむ(引き受ける)人物として描かれています。モモやくまさぶろうのような人物とその行動は、現代では、とても重要なことだと思います。ユーモアのある絵本ですが、ふかく意味づけることを誘われる作品です。

          

ユノセイイチさんの描く「くまさぶろう」は、おかしみがあって、ゆたかな表情をしています。

     

      ・・・

※『くまさぶろう』 もりひさし文、ユノセイイチ絵、こぐま社 1978年  (2026/2/24)

SHARE