ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くらやみこわいよ』-くらやみとむきあう不思議な体験

くらやみがこわい ラズロ

でも、最後は、くらやみを怖がらなくなります。
原題は、The Dark (2013)

     ・・・

くらやみは、

ラズロと同じ家に住んでいます。

クローゼットにかくれていたり、

カーテンのかげにすわっていることもあります。

たいていは、地下室にいます。

 (くらやみが人物化しています)

     ・・・

ある夜、

くらやみがやってきます。

「ラズロ」と、くらやみが語りかけます。

「みせたい ものが あります」

「ここに?」

「ちがいます」

「ここ?」

「いいえ、ちがいます。したの かいです」

「したの かい?」

「はい」

「ちかしつなの?」

「そうです・・・もっと こっちへ きてください」

ラズロは、くらやみに近づいていきます。

「さあ、もっと こっちへ」と、くらやみは くりかえす。

「したの ひきだしです」

「え?」

「したの ひきだし」くらやみは くりかえました。

「あけてください、したのひきだしを」

「わあ、ありがとう」

「どういたしまして」

 (見つけたのは豆電球です)

    ・・・

次の朝、

ラズロは、くらやみに会いに地下室へいきます。

「おはよう、くらやみさん」

くらやみは こたえません。

ひきだしが あいたまま。

笑っているように見えます。

    

 くらやみは いまも ラズロの そばに いるよ。

 けれど、もう こわくない。

     

語り手はきみ(聞き手)に向けてこう語りかけます。

くらやみは きみを怖がっていないこと、

部屋のすみから きみをそっと見ていること、

待っていたり、見下ろしたりしていると語りかけます。 。

そして、屋根、窓、階段、クローゼット、カーテンが必要なように、

 

くらやみが なかったら、どこも かしくも あかるくて、でんきゅうが ひつようだって きづくことは ないだろうな

スリルとサスペンスがある巧なおはなし作りです。

また、ラズロがくらやみに誘われて地下室に降りていくところで、語り手が「きみ」(「聞き手」)にむかって語りかけるところが面白いと思いました。読者は、くらやみを克服するラズロに共感するこでしょう。でも、人物化されたとは言え、くらやみはやはりすこし怖いかな(?)

 
「くらやみ」は何かの喩えとして見ることができます。「くらやみ」に喩えられるさまざまなことがありますが、それを克服するにはラズロのように行動する勇気が必要です。 また、くらやみがあるから「電球」が必要だというのは、なんだか落語のオチのようですが、くらやみを含め、みんな意味があって、そこにある(いる)とも言えます。

       ・・・

※『くらやみこわいよ』レモニー・スニケット作、ジョン・クラッセン絵、蜂飼耳訳、岩崎書店 2013年  (2020/11/27)

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