ふるはしかずおの絵本ブログ3

『かばのベロニカ』- かばは、やはり目立ちます

ベロニカの魅力がいっぱいのロジャー・デュボアザン(1904 – 1980 )の絵本です。

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かばは目立つどうぶつです。

 (たしかに)

でも、

かばの仲間と暮らしているベロニカは、ぜんぜん目立ちません。

 (みんなかばですからね)

みんなと ちがうかばに なりたいな …… ゆうめいなかばに なりたいな

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ある日、ベロニカは、人間の町にいきました。

そこでは、かばは、ベロニカだけです。

ベロニカは、すばらしく目立ちました。

 (あたりまえ。まわりは人間だけですから。)

   ・・・

町は にんげん にんげん にんげん・・・

ベロニカは、

交通のじゃまに なったり、

歩道や車道で ねたり、

広場の池の水を のんだり、

池の水を、ねっころがって 空っぽにしたり、

八百屋さんの野菜を ひとくちでたべたりしました。

 (ここが くりかえし)

 (ベロニカの失敗がつづきます。ユーモアいっぱいです。)

「あなたをたいほする」とおまわりさんが言います。

「つかまったら ぶたれちゃう」とベロニカは逃げだします。

でも、

ベンチのうしろに隠れますが、目立ってしまう ベロニカ。

頭隠して尻隠さず。(笑)

牢屋に入れられる ベロニカ。

神妙な顔の ベロニカです。

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しかし、

そこへ、「りっぱな おばあさん」がやって来て、ベロニカを救出します。

「かばのいる かわに かえりたい」というベロニカのため、

輸送車を手配してくれました。

      

こうして、

かばの国に帰ると、

ベロニカは、以前とはちがって、有名なかばになりました。

みんなが、大事にしてくれました。

 (なぜかって?)

ベロニカの大冒険のはなしを 聞くために、

みんな、彼女のまわりに 集まってきたからです。

ベロニカは しあわせでした

 (よかったね。ベロニカ)

この絵本は、ベロニカの人物像の魅力につきます。かばのベロニカがしていること、言っていることが笑いを誘います。ユーモアがいっぱいです。ベロニカはけっして不自然な、おかしな行動をしているわけではありません。かばらしく振る舞っています。でも、ベロニカの行動は、読者の常識とは反対です。「あんなことしている」「へんなかば」という読者の思いが笑いを誘います。ベロニカにとって自然な事も、「まち」の中ではとんでもない事になってしまいました。でも、「かばのくに」に帰ると、ベロニカは大冒険をした人物として有名です。


「かばのくに」のベロニカ、「にんげんのまち」のベロニカは、同じベロニカなのに全く違った存在になってしまいました。こうしたことは、わたしたちの世界にもありそうです。    

      

『かばのベロニカ』(1961)は、「かばのベロニカ」シリーズ(全3巻)で復刊した絵本の一冊です。他に『ベロニカとバースデープレゼント』『ひとりぼっちのベロニカ 』(復刊ドットコム)があります。

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※『かばのベロニカ』ロジャー・デュボアザン作・絵、神宮輝夫訳、復刊ドットコム  2015年 (2019/12/11)

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