ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 百年の 家 』- 「なくなったものの本当の護り手は、日の光と、そして雨だ」

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文中の「わたし」とは、表紙の「家」です。
つまり、家が、語り手です。
わたし(家)が見た、20世紀です。
      
   「見ろよ! おっそろしく古い家だ」
   もうずっと、ただの廃屋だった わたしを、
   やっと 見つけてくれたのは、
   子どもたちだった

      
1900年 本当は、1656年に 建てられた わたし(家)。
    1656年は、ペストが 大流行した年でした。      
1901年 廃屋のわたしを 見守っていたのは、めぐる 季節だけ。
    わたしは 思います。
    がっしりとした家に ほしい、と
1905年 移り住んできた 人たちは、果樹を 育てはじめます。
1915年 むすめの 結婚式。
    花むこは、レンガ職人で、兵士です。
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1916年 子どもが 生まれました。
     -この地が平和で ありますように。    
1918年 第一次世界大戦が終わりました。
    夫は 戦死。
    妻は 泣いています。
1929年 むらさき色の しみだらけ 家( わたし )。
1936年 「 コムギと戦う 」日( 刈り入れの日 )。
1942年 第二次世界大戦。
    丘のわたし(家)を 明るく照らしだす、遠くの 戦火。
1944年 レジスタンスの勇敢さと 農作業を助けてくれたことを 
    忘れない家族。
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1958年 街へ出ていく 息子。
1967年 雨降る日の 母親の葬儀。
1973年 新しい世代の 生活が 始まります。。
    わたし(家)は、もうだれの家でも ありません
    わたしの旅も、もうすぐ 終わりです。
1993年 廃墟となった わたし。
      
1999年 おっそろしく古い家は、いま どこにある?
    じぶんの 新しい住所が、わたしには わからない。
・・・
    けれども、つねに、わたしは、わが身に 感じている。
    なくなったものの 本当の 護り手は、日の光と、そして 雨だ。

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わたし( 家 )が体験した 20世紀。
廃屋の発見、
再建、
結婚、
誕生、
生と死、
喜び・悲しみ、
戦争、
収穫、
春夏秋冬、
破壊、
新しい生活・・・
止まらない時間が あります。誰も、この時間を止められません。そして、人間関係、社会、自然が 変わります。万物は 流転する(ヘラクレイトス)。この家を中心にした構図は 変わりませんが、絵は、百年の歴史を物語っています。大人向けの絵本です。
      
ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「1900年」を思い出しました。ロバート・デニーロ、ジェラール・ドパルデュー、ドミニク・サンダ、ドナルド・サザーランドが共演したイタリア現代史の映画でした。
        ・・・
※『 百年の家 』 J・パトリック・ルイス作、ロベルト・インノチェンティ絵、長田 弘訳、講談社 2010年  (2018/1/11)  
        

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