ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ムーン・ジャンパー 』- 遠い日とかさなる幻想的な世界
-09

幻想的な世界がひろがるはなしです。タイトルの「ムーン・ジャンパー」とは何でしょうか。

        ・・・

満月。
 (幻想的な世界が生まれる道具立てです)
ふくろう、
ねこ、
やみ、
よるの かげ。
満月に魅せられて、はだしで庭にでる子どもたち。
夜の庭で、みんな、踊りだす。

 (読者はすっかり夢現的な世界に入ります )

554

夜の木に のぼり、
歌をつくり、
詩もつくる。
こわーい はなしをする。

 
そして、みんな、ジャンプする。
でも だれも、おつきさまに さわれない
家の まわりを はしりまわる。
空の月。
月のふうせんは、どんどん ふくらむ。

       

      

きょじんの影が わたしたちにしのびよる。
でも、それは とうさんの 影。
戸口で かあさんが 呼ぶ。
「こどもたち、こどもたちったら」
でも、

子どもたちは、ムーン・ジャンパー
888

「じかんよ」とおかあさん。

 (母の声が、子どもたちを現実の世界につれもどします)
「おやすみなさい、おつきさま」

 
4にんは ねむって、あしたの おひさまを ゆめみる

        ・・・

生あたたかい夏の夜。風がふき、月のあかりが影をつくります。現実と幻想のあわいに成りたつ世界のなかで、子どもたちは裸足で妖精のように踊ります。ただ踊り、うたい、はしりまわり、ジャンプすることに喜びを感じている子どもたち。

    
その姿から、遠い昔の夏祭りの夜を思いだしました。祭りの賑わい、盆踊り、さまざまな露店、アセチレンの臭い。子どものわたしにとって、その夜は『ムーン・ジャンパー』のような非日常的な世界でした。

      

『木は いいなあ』のジャニス・メイ・ユードリー、『かいじとゅうたちの いるところ』のモーリス・センダックの絵本です。1960年コルデコット・オナー賞を受賞しました。        

       ・・・

※『ムーン・ジャンパー』 ジャニス・メイ・ユードリー文、モーリス・センダック絵、 谷川俊太郎訳、 偕成社 2014年(1959年初版)   (2022/7/25)

SHARE