ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 アパートのまど 』- 8つの部屋をのぞく

33
「アパートのまど」からのぞかれた人物たち。

さまざまな人生模様が見えてきます。

  
     ・・・
野原にちいさなアパートがあります。
窓が8つ。
窓には、いろいろなカーテンがかかっています。
きいろ、みどり、あお、みずいろ、しろ、オレンジ、むらさき、黒のカーテンです。
     ・・・
それぞれの部屋に住んでいるのは誰なのでしょう?

 
きいろのカーテンの部屋には、
 朝の歌を歌う カナリアがいます。
 窓からは、焼きたてのパンの匂いが流れてきます。

 
みどりの窓は、
 いつも花が いっぱい。
 花を育てるのが、とても上手な人がいます。
33
あおい窓には、

 バイブをふかす おじいさん。

 
みずいろの窓には、

 ピアノがあります。

 いつも同じところで間違う人。

 
しろい窓からは、

 薬の包みでつくった 紙飛行機が飛んでくる。

 病気の子どもがいるのかもしれない。

   
オレンジの窓には、

 お茶を飲むおんなのひと。

 ミルクを飲むねこ。

 ふたりで仲良くビスケットを食べています。

 
むらさきの窓は、

 遠い昔を夢みている おばあさんがいます。

 

黒い窓は、

 いつもカーテンがしまっている。誰が住んでいるのかしら。
 夜、ひとりのピエロが顔を出します。
 はしごを立て、のぼり、銀色の笛をふきます。

    
ほしたちは、・・・じっと ふえの おとを きいていた
0067
杉田豊さんの絵には、幻想的でロマンチックな雰囲気があります。また、絵と文章には鮮やかな色彩、カナリヤの声、パンや花やパイプの匂い、ピアノやフルートの音色、ビスケットの味、光と夜 が溢れています。

 

「まど」には、外の世界を遮断するだけでなく、内と外をつなげる意味とイメージがあります。この絵本のように、部屋の中を覗き込む入り口(窓口)でもあります。そして、覗き込んだそれぞれの部屋には、さまざまな生活と人生がありました。子どもには難しいところがあるでしょう。大人の発想、大人の感覚からうまれた絵本といえるかもしれません。その意味で、子どもの本としては評価がわかれることと思います。

 

今はわからなくても、読んでみて何か引っかかるところが読者に生れればと思います。人にはそれぞれの生活と人生があるという真実に、子どもたちもいつか出会うことになるでしょう。昭和55年に出た絵本です。

     
  「心が今日知ったことを頭が明日理解する」

       (ジェイムズ・スティーブンス)

      ・・・

※『アパートのまど』 竹下文子作、杉田豊絵、フレーベル館、2002年   (2021/10/24)

SHARE