ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ジュース』- かげぼうしがジュースを飲む

リョウと かげぼうしのおはなしです。

ユーモアもたっぷり含んだ『ジュース』です。

      ・・・

梅雨があけた、

夏の日、

リョウは外へ飛びだします。

しばらく走っていると、

あれ、

かげぼうしが、リョウから離れ、おくれています

     ・・・

「リョウ、ちょっと、まっておくれよ」

「はやく、ぼくの あしに ちゃんと くっついて」と言って、

走り出す リョウ。

ジュース・スタンドで、ジュースを買って、ごくごく。

      

かげぼうしが いません。

おおい、かげぼうしやあい。

おまわりさんに聞くと、

かげぼうしは、物干しにかけてあります。

君が蹴とばして、海に落ちてしまった、といわれます。

「もう、かわいたかな」

       ・・・

「もう つきあってあげないから」と、かげぼうし。

「ごめん。・・・そういわないで」と、リョウ

「やなこった」

「きげんを なおしてくれよ。なにか おいしいもの あげるから」

「じゃ、オレンジ・ジュース。」

        

リョウが、缶を開け、かげぼうしに飲ませようとすると、

うまくいきません。

「ちえっ」

みんな地面に、こぼれてしまいます。

     

ああ わかった。・・・リョウが のめばいいんだ

「ぼくが?」

リョウがジュースを飲むと、

かげぼうしも 飲んでいます。

「おいしい? かげぼうしくん」

かげぼうしは だまっています。

「ぼくは とても おいしい」

かげぼうしが、リョウから離れてしまう発想のユニークさ。リョウとかげぼうしの会話のおもしろさ。また、リョウの表情としぐさがとてもいいのです。生き生きとしています。杉浦範茂さんのすばらしい絵です。

   

リョウが「ぼくは とても おいしい」と言ってジュースを飲むことが、かげぼうしが飲むことにもなる当たり前の事実が気になりました。ここに象徴的な意味を感じます。

 

かげぼうしは、もしかしたら、親の喩えかもしれません? 
リョウ(子ども)が「とても おいしい」と言ってジュースを飲むこと(体験すること)は、かげぼうし(親)が飲むこと(よろこぶこと)にもなると解釈したら、かげぼうしとは親のこと。

絵本のそでにある三木さんのことばです。「男の子は元気がいい。かげぼうしを困らせながら大人になります」。

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※『ジュース』三木卓作、杉浦範茂絵、鈴木出版  2019年

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